総務の業務改善が求められる理由
総務に業務改善が求められる理由は、おもに3つあります。
1つ目の理由は、業務内容が多岐にわたることです。日々の庶務、管理業務をはじめ、顧客対応などを、限られた総務担当者で遂行する必要があります。また、新しい業務や突発的な業務が増えることも多く、業務改善をしなければ作業時間が足りなくなるリスクが高まるでしょう。
2つ目の理由は、慢性的なリソース不足です。総務を含む管理部門には、人材の割り当てが少ない傾向があります。単純に業務量とそれを遂行するスタッフの数がアンマッチな現場も多いでしょう。しかし、総務のサポートがおろそかになると、社内の労働環境整備が行き届かず、社内スタッフが働きづらくなり、その結果、離職につながる可能性もあります。よって、会社全体の生産性を下げないためにも、総務の業務改善は必須です。
そして3つ目の理由が、業務が属人化しやすいことです。人手不足に悩まされながら日々の業務に忙殺され、マニュアルの整備や引き継ぎが後回しになることが多く、特定のスタッフしか行えない業務が増えていく現場が見受けられます。したがって、総務担当不在時に複雑な事務処理が発生した場合、業務効率が下がるだけでなく、かえって手間が増えることがあります。そのような事態を防ぐためにも、業務を標準化する工夫や発想が必要でしょう。
総務における業務改善の実践プロセス
総務の業務改善を行う際には、以下5つのステップを踏むとよいでしょう。ステップごとの内容について解説するので、確認しておきましょう。
現在の業務状況を把握する
総務の業務は非常に多くの種類があるため、まず全ての業務を棚卸ししてみることからはじめましょう。スタッフにヒアリングを行い、全ての業務をリストアップし、それぞれの内容や担当者、実施頻度、対応状況などについて可視化します。
さらに、現状の業務フローを簡単にまとめておけるとベストです。現場の担当者にできるだけ丁寧にヒアリングを行うようにしましょう。
課題を発見する
現状の業務状況を可視化できたら、次はそれぞれの業務の課題を確認していきます。課題を確認するためのポイントはいくつかありますが、代表的なものは工数(業務負担)と業務フローに注目することです。
実際の工数が想定よりも多くかかっている業務は、何らかの課題が含まれているといえます。また、無駄な作業や重複している作業が発生している業務は、関係者間で情報や知識の共有ができていない結果でもありますので、全体最適の視点から生産性向上を阻害する課題が含まれているといえるでしょう。
さらに、慣例的に実施している業務で生産性が低いものや、1人の担当者しか実施できない業務がある場合も、「そもそもの業務の目的は何か」「その業務を止めることはできないか」「例えば紙ベースの書類のやり取りを他の手段でできないか」などをゼロから考えてみると、思わぬ課題が潜んでいることもあります。
改善策を検討する
業務ごとの課題が洗い出せたら、目標を設定し、具体的な対策を検討します。課題ごとに解決方法は異なりますが、代表的な業務改善方法を次章で紹介するので、まずはこの中から検討してみてください。
改善策が決まったら、目標を達成するまでの具体的な実施スケジュールも忘れずに設定しましょう。
改善策を実施する
スケジュールに沿って改善策を実施します。このときの注意点は、いきなり全ての改善策を行わないようにすることです。
業務改善をはじめる段階では、従前の業務だけでもスタッフが多忙なため、改善策を実施するためのリソースをねん出するのは困難でしょう。そのため、工数対効果のバランスを意識しながら改善策の優先順位を決め、スモールスタートで取り組みをスタートするのがおすすめです。
改善策の効果を分析する
改善策を実施したら、効果検証を行いましょう。業務改善をはじめたからといって、すぐに高い効果が出るわけではありません。PDCAサイクルを回しながら、改善策を徐々にブラッシュアップする必要があります。
まったく効果が出ない改善策は別の方法への変更が必要です。また、そもそも業務フローに問題がある場合は、根本的な見直しが必要でしょう。
総務の業務改善を実現するアイデア5つ
総務の業務改善を実現する改善策のアイデアを5つ紹介します。貴社の課題解決につながりそうなものから、ぜひ実践してみてください。
業務の見える化
総務の業務改善を実現する1つ目のアイデアは、業務の見える化です。業務の見える化とは、社内で明文化されていない業務を、第三者が把握できる状態にすることを指します。
なお、業務の見える化を実施する場合は、業務フローを明確化するケースと、業務の状況を明確化するケースの2種類があるため、目的に応じてどちらか、または両方を実施しましょう。
業務の見える化を実施する具体的な方法としては、業務マニュアルや業務記述書などの作成が挙げられます。テキストだけでなく画像や動画も活用して、業務のやり方や現状を誰にでも把握しやすくすることがポイントです。
業務の自動化
業務改善を実現する2つ目のアイデアは、業務の自動化です。総務にはデータ入力や集計といった定型業務が多いので、これらを自動化できればスタッフの工数を大幅に削減できるでしょう。
業務の自動化を行うためには、RPAの活用がおすすめです。RPAとはスタッフがパソコンで行っている定型業務を自動化できるITツールのことで、多くの企業で導入が進んでいます。
RPAで定型業務を自動化することによって、スタッフの負荷と工数を抑制できるため、総務の業務改善を実現するだけでなく、空いたリソースで別の業務を行えることで生産性の向上にもつながる点がメリットです。
業務の見直し
業務の棚卸しを実施した結果、工数がかかりすぎているものや効果が薄いもの、そもそも実施する必要性が疑わしいものは、業務の見直しが必要です。
業務の見直しを行う方法は、業務フローの変更や改善が基本ですが、無駄なものや効果がないものについては、思い切ってなくすことも視野に入れましょう。単純に業務がなくなることで、その分のリソースも必要なくなるため、手っ取り早く業務改善を実現できます。
業務のアウトソーシング
業務のアウトソーシングも、総務の業務改善策としては最適でしょう。近年は、総務の業務をアウトソーシングできるBPOサービスが多く提供されているため、そちらを活用することによって、業務改善を実現することが可能です。また、経理や事務作業など、一部の業務をアウトソーシングすることも、総務の業務改善に有効です。
総務の業務をアウトソーシングするメリットは、リソース不足の解消、人件費を削減し固定費から変動費にシフトできること、そして外部のノウハウを業務に反映することで、業務の質が向上することなどが挙げられます。
業務の標準化
業務改善を実現する5つ目のアイデアは、業務の標準化です。誰でも業務を行えるように改善することによって、業務の属人化を抑制できます。
業務の標準化を行うもっとも一般的な方法は、マニュアルの作成です。業務の実施方法をテキストや画像、動画などを活用することで、誰にでも実施できるような内容に仕上げましょう。
また、総務部門のスタッフのスキルマップを作成することも、業務改善に有効なアイデアです。スタッフごとのスキルの差が可視化できれば、最適な業務アサインや育成にも活用できるため、効率的に業務効率化につなげられるでしょう。
総務の業務改善で注意が必要なポイント
総務は多忙な部署なので、業務改善を実施する際には押さえるべきポイントがあります。特に重要な3つのポイントについて確認しておきましょう。
マルチタスクになりすぎないようにする
総務の業務改善を実施する際には、1人のスタッフが多くの改善策を実施しないように注意が必要です。
一度に多くの改善策を実施すると、それぞれに割けるリソースが減り、全てが中途半端な結果に終わる可能性が高いでしょう。また、それぞれの改善策がスケジュール内に実施できないリスクも高くなります。
したがって、総務の業務改善を実施するときには、スタッフのスキルや業務量、スケジュールなどを加味したうえで、実施可能な改善策を担当してもらうようにしましょう。
クオリティを落とさないようにする
総務の業務改善を実施する場合には、効率を重視するあまり業務のクオリティがおざなりにならないよう注意が必要です。
業務効率や工数の抑制だけを重視してしまうと、業務のクオリティが落ちる可能性が高くなり、社内のスタッフを十分にサポートできなくなるリスクが発生します。その結果、会社全体の生産性が下がるような事態は、絶対に避けなくてはいけません。
そのためには、実施した改善策を振り返り、効果検証を行う運用が必須です。PDCAサイクルを回しながら、業務のクオリティを維持した状態で工数や負荷の軽減につながるように改善していきましょう。業務改善策の実施自体が目的になってしまうと本末転倒なので、肝に銘じておく必要があります。
改善策を実践する体制を整える
総務の業務改善を実施するためには、実施できる体制が整っていることが前提です。
スタッフが既存の業務だけで忙しい現場で業務改善策を実施すると、一時的に負荷が上がることになります。その結果、残業や休日出勤、業務の持ち帰りなどが発生してしまった場合には「なんのための業務改善なのか」という残念な事態に陥ってしまうでしょう。
業務改善のアイデアがいくらあっても、着実に実施できる体制が整っていなければ無意味です。スタッフごとの業務量の整理やアウトソーシングなどを実施して、社内で業務効率を実現できる体制を整えるようにしましょう。
総務の業務改善を成功させた事例3選
総務の業務改善を実施するときの参考にしてもらうため、実際の成功事例を3つ紹介します。自社の状況と照らし合わせながら確認してみてください。
アウトソーシングを活用した事例
某原料メーカーの総務部門がアウトソーシングを活用して、本社とグループ会社4社の業務改善を実現した事例を紹介します。
同社は事業の拡大にともない、総務部門の業務量が甚大化していたことが課題でした。そのため、本社移転のタイミングで、新オフィス内に総務ルームを設置し、全社の総務業務をワンストップで実施できる体制を構築したそうです。
具体的には、来客対応から事務作業に至る多くの総務業務をアウトソーシングしたことによって、総務スタッフがコア業務に専念できるようになりました。また、業務の棚卸しとフローの見直し、マニュアル整備などを実施して業務の標準化を実現したことも、同社の業務効率化が成功した大きなポイントだといえるでしょう。
ペーパーレスや押印廃止を進めた事例
次に紹介するのは、某商社の総務がペーパーレス化や押印廃止を進めた事例です。
同社の東京本店はフリーアドレス化を導入した際、文書管理をファイルサーバーからSharePointへ移行しました。以前から同社では文書のデジタル化自体は実現できていたのですが、検索しづらい点が課題だったそうです。しかし、SharePointへ移行したことで、スムーズに検索できるようになり、文書をデジタル管理できる環境が整いました。
またこれにともない、これまでExcelで作成したファイルをプリントアウト後に押印していた業務フローを、デジタルで完結できるようにしたこともポイントです。Excelファイルを確認する作業は、上司にMicrosoft Teamsで申請して、SharePoint上のファイルを担当者がそれぞれ確認するだけの業務フローに改善されました。
参考:ASAMA/【中小企業のDX】実現!「総務・人事・経理」のデジタル化5選
RPAを活用した事例
最後に紹介するのは、RPAを活用して総務を含む管理部門全体の業務改善を実現した事例です。
株式会社システック様は、鹿児島に本社を置き、運送業向けに車の走行距離や速度を記録するシステムや車両管理システム、労務管理システムを提供しています。社員数が18名で、そのうち2人で管理部門の業務を担っています。
システック様がRPAツールの導入に至った経緯は、2人の管理部門担当者にのしかかる業務の負担を軽減するためでした。管理担当者は、月に2,000社の顧客に対して発注書の作成や請求処理を行っていました。それとは別に、社内の事務処理作業も担当していたため、就業時間内に業務が終わらず残業することも。新たに従業員を採用すれば解決できる問題ですが、人件費の問題で別の方法を探す必要があったそうです。
そこで、人件費よりもコストを抑えられるRPAツール「ロボパットDX」を導入することで、業務の効率化を図ることにしました。書類の作成をロボパットDXに任せ、最終チェックだけ管理部門がすることで、業務負担を大幅に軽減することに成功。導入後は、連日深夜まで残業しなければいけない状況でしたが、繁忙期でも20時前には帰宅できるようになったそうです。
参考:ITスキルが低い社員でも、自らのチカラでロボットを完成 ロボパット導入企業の社長が「現場が使いこなせるRPAツールを選ぶべき」と話すワケ|株式会社システック
まとめ
総務は業務内容が多岐にわたり、業務が属人化しやすい、慢性的なリソース不足などの理由から、業務改善が必須の部門です。また最近は日本企業の働き方改革が強く求められており、総務部門の業務改革も避けることはできません。
ただし、総務の業務改善を行う際には、マルチタスクにならないことやクオリティを落とさないように注意が必要です。また、施策をやりっぱなしにしないPDCAサイクルを回せる体制の構築も必要でしょう。
総務の業務効率化をはじめる際には、本記事でもご紹介したRPAの活用が有効です。総務には事務作業が多いので、RPAで自動化することによって、ほかの業務効率化施策を行うリソースを捻出しやすくなります。
RPA「ロボパットDX」は高いITスキルを必要としない、現場向けに開発されたRPAであるため、多くの企業の総務部門で活用されています。また、RPAの導入メリットや成果につなげるコツなど、成功事例をもとに多くのノウハウが得られる無料WEBセミナーも開催しています。
本記事でRPAに興味を持たれた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。