RPAに期待する導入効果
RPAは「Robotic Process Automation」の略語で、ホワイトワーカー(知的労働者)が行うデスクワークなどの単純業務を、ソフトウェアロボットが代行する仕組みを指します。RPAは、標準化された業務(一定のルールに従って行う業務)との相性がいいとされており、例えばデータの収集・入力作業などを得意としています。
近年、業務生産性を向上させるテクノロジーとして大きな注目を集めており、RPAを導入する企業は今後さらに増えるでしょう。
RPAには直接的な業務の削減効果が期待されがちですが、可視化しにくい定性的なメリットもRPA導入の大きな魅力です。
ここでは、RPAを導入することで期待できる4つの効果について解説します。
導入による費用対効果(投資対効果)
RPAを導入することで、様々な効果を期待でき、中でも現場の「業務時間削減」に繋がることがとても魅力的といえます。RPAを運用・維持するためにコストは発生しますが、人件費と比べランニングコストを抑えられ、今までホワイトワーカーが人力で行っていた事務作業などをRPAが担うことで、売上を上げる活動や別の業務に時間を充てることができます。
また、繁忙期であっても、RPAがあれば残業の発生や代替の人員確保に頭を悩ませる必要もなくなります。さらに、RPAに新人研修や実務研修は必要ないため、稼働までのリードタイムも不要となるのです。
業務品質の向上
RPAは、人が行った作業よりもミスなく処理してくれることも魅力的なポイントです。
例えば、コピー&ペーストを繰り返す単純作業でも、ヒューマンエラー(人的ミス)が発生しないという確証はありません。また、ミスが発生してしまった場合、該当箇所を探すのにも時間がかかるため、余計な工数がかかってしまいます。
しかし、RPAを活用すれば、ロボットが指定したルールに基づいて業務を処理していくため、ミスが発生しません。ミスが発生しないということは、ダブルチェックなどの手間も省くことができるため、業務全体の流れがスムーズになるでしょう。
さらに、人は集中力によって業務スピードが変化しますが、RPAはロボットであるため24時間休むことなく稼働し続けても、業務スピードが落ちることはありません。そのため、大幅な業務効率化が期待できます。
労働環境の改善
現代の日本は、少子高齢化に伴う労働人口の減少や人材不足が深刻化しています。
また、働き方改革の実施により労働時間の短縮や見直しが行われているため、企業は従業員の長時間労働をなくし、少人数かつ短い時間でも効率的に業務が回せるよう工夫していく必要があります。
RPAを活用すれば、入力、集計などの単純作業は人から切り離すことができ、従業員の負担を大きく軽減することができます。ミスが許されない作業をRPAに任せることで、精神的プレッシャーから解放されるというメリットもあります。
また、RPAに任せることができないプロセスが複雑な業務に集中し、スキルを向上させていくことは従業員の業務に対するモチベーションが高まるきっかけにもなります。従業員のモチベーションが高まれば、離職率の低下や商品・サービス品質の向上も期待できるでしょう。
理想の人員配置
中には「RPAの導入で仕事量が少なくなると、リストラされてしまうのではないか」と不安に思う方もいるでしょう。しかし、RPAを導入したからといって、すべての仕事がなくなるわけではありません。
RPAは、主にパソコンの単純業務では抜群の効果を発揮しますが、それ以外の複雑な業務を得意としません。したがって、単純業務(ノンコア業務)をRPAに一任し、従業員には顧客とコミュニケーションを取ったり、アイデアを出したりする業務(コア業務)に集中させることができるようになります。
顧客とコミュニケーションの時間を多く取ることは、結果として顧客の理解につながり、契約成約率や既存顧客の満足度の向上が見込めるため、本来は何より優先すべき取り組みです。
これまで、単純業務に時間を取られてカバーできていなかった企業は、RPAによってコア業務に人員を割り振ることができるようになるため、より戦略的な経営を行うことができるようになります。
RPAの効果を最大化するコツ
RPAを導入するだけでは、期待した効果を発揮できるわけではありません。
RPAの効果を最大化するためには、いくつかのコツを押さえておく必要があります。ここでは、効果を最大化させるコツを4つご紹介します。
自社に合うツール選び
RPAは、ツールによって強みが異なります。そのため、自社にマッチするツールを選ぶために、事前に現場にヒアリングを行ってからツールを選定する必要があります。
RPAは大きく分けてサーバ型とデスクトップ型に分けられます。
サーバ型は、RPAロボットがサーバ内で稼働するため、業務を横断的に管理することが可能です。また、大量のデータを一括管理することができるため、大企業でよく利用されます。
デスクトップ型は、個人PC内で稼働するRPAロボットで、業務担当者レベルで管理することができます。個人事業主や中小企業など、比較的従業員数が少ない企業におすすめです。また、大企業では部門毎にサーバー型と併用して利用されることも多くなっています。
近年はデスクトップ型の中でもフローティングライセンスと呼ばれる、IDを切り替えて複数のパソコンで使えるライセンス形態もあります。
成功事例を参考にする
RPAを導入したものの、中には運用することが困難になってしまうケースもあり、目に見える効果を実感できなかった企業があることも事実です。導入後に失敗しないためにも、業務改善に成功した企業の事例を参考にするようにしましょう。
また、RPAの導入をトップダウンかボトムアップで進めるかによっても、生じるメリットが異なります。
トップダウンの導入で生まれるメリットとしては、経営責任者や幹部をリーダーにすることで組織全体の視点から業務を横断的に選別することができます。また、選別された業務からRPAツールで改善できる期待が大きいものを順位付けすることが可能です。
ボトムアップの導入で生まれるメリットとしては、現場の人間が主導して導入を進めることで、新たに自動化してほしいさまざまな業務に関する意見を取り入れることが可能になり、より良い企業全体の業務効率化が図れます。
導入事例を参考に、自社はトップダウンとボトムアップのどちらで導入を進めるのが適切か見極めておきましょう。
複数人が扱える体制づくり
RPAは、導入後でも定期的にメンテナンスをする必要があります。RPAは単純業務を自動化でき、ミスなく素早く処理できる利点がありますが、トラブルやルールに変更があった場合は、人が手を加えて修正や設定変更などシナリオのメンテナンスをしなければいけません。
修正やメンテナンスなどの開発は外部業者に委託することも可能ですが、長期的にRPAを利用するのであれば、知識や技術を持っているRPA担当者を社内で育成することが重要です。
普段RPAを利用するのは現場にいる従業員ですが、トラブルが発生した場合に連携がとれる担当者を配置しておくことで、迅速に問題を解消することができます。部門間で連携がとれないと解決に時間がかかり、その間RPAの処理が止まってしまいます。そのため、起こり得るエラーを整理し、エラー発生時の具体的な操作手順を明確にしておきましょう。その手順を運用メンバーで共有しておくことが大切です。
何度も効果検証する
RPAの導入後は定期的に効果検証を行い、実際に導入したことで効果が出ているか、課題点や修正する部分はあるかどうかを確認するようにしましょう。測定結果をもとに、適宜ロボットを修正したり、業務フロー自体を見直していくことで、よりRPAの効果を高めることができます。効果検証をするために、RPAにかけたコストの合計や業務処理量、エラー発生件数などを数値化するなど測定方法を明確にしておくと、定量的な効果測定が可能となり、分析がしやすくなるでしょう。
現場側と経営側で期待する効果は違う
RPAは、経営側と実際に利用する現場側との温度差が生じた場合、期待している効果が発揮できないケースがあります。
経営側としては、業務の効率化を狙いRPAの導入判断をします。
しかし、実際にRPAを利用するのは、経営側ではなく現場にいる従業員です。現場側が期待するRPAの効果は、従業員が働きやすい環境が構築できるかどうかです。そのため、両者が納得する効果を得るにはどのようにRPAを活用していくのか、慎重に考える必要があるでしょう。両者にズレが生じた状態のままでは、望むような効果を得ることはできません。
また、経営側が主導で導入する場合、ツールを導入する目的を従業員に説明することも欠かさずに行いましょう。なぜなら、業務をRPAに奪われると感じる従業員も少なからずいるからです。経営陣は、RPAを導入する前に現場にヒアリングを行い、双方が納得できる土壌を作っておくことが重要です。
RPAの効果を実感された事例
ここでは、弊社が提供するRPAツール「ロボパットDX」を導入して、効果を実感された企業の事例を3つご紹介します。
株式会社POPER
株式会社POPERさまは、学習塾に特化したクラウドサービス「comiru」を運営しており、保護者とのコミュニケーションや塾のバックオフィス業務の効率化を図るツールとしては業界一の評価を得ています。
POPERさまでは、顧客1人ひとりの情報を集計しており、顧客数が増加したことで従業員への負担が大きくなっていることを課題としていました。この課題を解決するために、RPAツール「ロボパットDX」の導入に踏み切ったそうです。
ロボパットDXを導入したことで、今まで顧客対応の合間に3時間かけて行っていた集計作業をRPAに任せることで、迅速な顧客対応が実現し、その他の作業にも集中することが可能になりました。今後の展望としては、集計作業だけではなく、顧客からの資料請求の問い合わせに対し、メールで資料を添付して送信する作業や塾自体の基幹部分まで自動化させることを目標としているそうです。
作業的業務はロボットに任せて、より価値の高い業務を─作業の効率化でスピーディーな顧客対応を実現|株式会社POPER
株式会社システック
株式会社システック様は、鹿児島に本社を置き、運送業向けに車の走行距離や速度を記録するシステムや車両管理システム、労務管理システムを提供しています。社員数が18名で、そのうち2人で管理部門の業務を担っています。
システック様がRPAツールの導入に至った経緯は、2人の管理部門担当者にのしかかる業務の負担を軽減するためでした。管理担当者は、月に2,000社の顧客に対して発注書の作成や請求処理を行っていました。それとは別に、社内の事務処理作業も担当していたため、就業時間内に業務が終わらず残業することも。新たに従業員を採用すれば解決できる問題ですが、人件費の問題で別の方法を探す必要があったそうです。
そこで、人件費よりもコストを抑えられるRPAツール「ロボパットDX」を導入することで、業務の効率化を図ることにしました。書類の作成をロボパットDXに任せ、最終チェックだけ管理部門がすることで、業務負担を大幅に軽減することに成功。導入後は、連日深夜まで残業しなければいけない状況でしたが、繁忙期でも20時ごろには帰宅できるようになったそうです。
ITスキルが低い社員でも、自らのチカラでロボットを完成 ロボパット導入企業の社長が「現場が使いこなせるRPAツールを選ぶべき」と話すワケ|株式会社システック
WILLER 株式会社
WILLER株式会社様は、大阪に本社を構え、移動ソリューションを提供する企業です。高速バスWILLER EXPRESSの運行を行うバス事業が有名です。グループ会社は日本国内だけではなく、シンガポールやベトナム、台湾といった海外の拠点もあります。
WILLER株式会社様は、日々の業務で繰り返し行われている作業を自動化する目的から、RPAの導入に踏み切りました。定型業務をRPAに実行させることで、従業員が本来すべき生産的な業務に集中できる状態を目指しました。
「ロボパッドDX」の導入により、提携している船会社の、フェリー商品の販売停止作業を自動化しました。従来までは社内でダブルチェックを行う必要があり、作業完了まで40分程度かかっていたようです。しかし、ロボパッドDXに任せたことで人間が行う作業は「0」になりました。ロボパッドDXの導入から約8か月で月間231時間の効率化につながり、生産性の向上を実現したとのことです。
ロボパッドDXの管理はリモートで行っているようで、管理業務の効率化も図れています。
ロボパット浸透の最短ルートは「現場でのロボ活」と「経営陣・管理者層への普及活動」の両軸を回すこと。 独自の工夫の積み重ねで、リモート環境での運用成功、ロボ活参加者56名に|WILLER株式会社
まとめ
業務を一部自動化でき、効率化を図れるRPAは大きな注目を集めています。
RPAは人材を確保するよりも低コストで導入でき、人よりもスピーディーに、かつ正確に業務をこなすことができます。RPAに自動化できる単純な業務を任せることで、従業員はより複雑な業務に集中できるようになるでしょう。
しかし、ただ導入しただけでは業務効率化は期待できません。自社にあったツール選びや、定期的な効果検証を行うことによって効果を最大化させることができ、業務の効率化が実現されます。
ぜひ、この記事を参考にRPAの導入をご検討してみてはいかがでしょうか。