あすか社会保険労務士法人
「人事労務のスペシャリストとして、企業の明るい明日を創ります」と掲げる、あすか社会保険労務士法人。社会保険手続きや給与計算代行、助成金申請代行といったアウトソーシング業から、労務や人事のコンサルティング業まで、社労士の枠にとらわれないサービスを提供しています。
社労士事務所ならではの煩雑な業務「公文書のダウンロード」をロボットで自動化しました。必要な公文書をロボットが夜中にすべてダウンロードし、翌朝の出社時にはすぐ業務をスタートできる環境を作っています。以前は公文書のダウンロード業務が負担となり、スタッフが辞めていたのですが、今は退職者がゼロになりました。月150時間ほどかかっていた業務が、月30時間ほどに減っています。
ロボパットを導入することで、事務所として処理できるトータルの仕事量を増やしていけたらと思っています。ロボットが稼働することにより、「人間が働く8時間分の業務」+「ロボットが働く24時間分の業務」が実現できます。このようにロボットをうまく活用して、全体の仕事量を増やし、最終的にはスタッフの給料に還元していきたいです。
自動化を成功させるコツは、最初から100%のロボットを目指さないこと。一連の業務工程すべてを自動化するのは難易度が高く、途中でつまずいてしまうのです。すると、落とし穴から抜け出せなくなり、ロボット作り自体を諦めてしまうかもしれません。まずはできるところまで挑戦し、次第に自動化する域を広げていくのが大切だと思います。
※以下、敬称略あすか社会保険労務士法人は、RPAツール「ロボパット」や業務改善クラウドサービス「kintone」などのデジタル技術を活用していることが評価され、2019年12月に、株式会社船井総合研究所の「社労士事務所経営研究会デジタルシフト大賞」を受賞しました。
積極的に働き方改革へと取り組み、社労士業界を牽引する同法人は、ユーザーとしてロボパットを活用するだけではありません。ロボパットの販売代理店という顔も持ち、アナログな社労士業界を変えるため、社労士事務所に向けてロボパットを展開しています。
今回インタビューしたのは、同法人副代表・労務コンサルタントの福田浩明さん。ユーザーとして感じる「自動化することのメリット」、販売代理店として思う「社労士事務所が業務自動化を成功させるコツ」という2つの目線で話を伺いました。
あすかは、給与部門・手続き部門・コンサルティング部門と3つの部門に分かれています。そのうち、ロボパットを業務に活用しているのが、給与部門と手続き部門。コンサルティング部門は、ロボパットの代理店部隊として動いたり、社内で自動化のシナリオを作ったりしています。
赤坂・中目黒・大阪・名古屋と4拠点あるなかで、ロボパットを導入しているのは、赤坂・中目黒・名古屋の3拠点です。赤坂拠点にいる私は簡単なロボットを、名古屋拠点の代表である酒井は複雑なロボットを作っており、ふたりで役割分担しています。
頻繁に使うロボットだけではなく、一度しか使ったことがないロボットを含めると、100は超えていると思います。
一度しか使ったことがないロボットの例は、資料を印刷するロボットです。以前、13時からの打ち合わせで資料が必要だと、12時くらいに気づいたことがありまして。手動で印刷すると1時間ほどかかりそうだったので、印刷を自動で進めてくれるロボットを5分で作りました。
ロボパットがあったおかげで、私はロボットに「あとはよろしく!」と作業を任せ、午後一番の打ち合わせに備えてランチでパワーチャージできました。
社労士事務所なら絶対に手を煩わせているであろう、公文書のダウンロード業務です。あすかでは、名古屋拠点で月1,500件ほど公文書をダウンロードしています。
この作業が、めんどくさいことめんどくさいこと。社会保険手続きを電子申請するシステム「社労夢」と「オフィスステーション」で、公文書ダウンロードを選択し、何種類もあるファイルから適切なものを選び、フォルダに名前をつけ、ダウンロードボタンを押し・・・と、とにかくクリックし続けなければならないのです。
以前は、パートタイムスタッフを3名雇い、公文書ダウンロード業務を回していました。しかし、煩わしさから「今日はあなたがやって」と押し付けあっていたのです。最終的には、公文書ダウンロード業務が嫌だから辞めてしまう。こうした悪循環で、スタッフが定着しないのが悩みでした。
そんなとき、ロボパットの存在を知り、導入してこの業務を自動化してみることに。「社労夢」と「オフィスステーション」にて、夜中に必要な公文書をすべてダウンロードし、翌朝の出社時にはすぐ業務をスタートできるようにロボットを作りました。
もともと月1,500件を捌くのに月150時間ほどかかっていましたが、現在は人が介入する作業が月30時間ほどに減りました。時間削減できたのはもちろん、パートタイムスタッフも煩雑な作業に対してストレスを抱えにくくなり、退職者はゼロになりました。
私が感じるメリットは、人が嫌がる作業を代行してくれて、自分の時間も捻出してくれるところです。
以前、クライアント企業の社員300名に向けて、「コミュニケーションは円滑か?」「リーダーは、リーダーシップを取れているか?」などと人事系のアンケートを集めたことがありました。その回答がPDFで300名分届きまして。結果をレーダーチャートや棒グラフにして分析したかったので、PDFの結果をExcelに入力し直す必要があったのです。
重い腰を上げて作業を始めたのですが、3名分くらい転記したら、心が折れてしまいました。そこで「業務時間外だから早く終わらせたいけれど、骨の折れる作業だ・・・」と頭を抱えた末、PDFデータをExcelに自動転記してくれるロボットを作ろう、と。
その結果、見事にロボットが作業をこなしてくれて、私はそのあいだに当時やっていたオリンピックのテレビ観戦を楽しむことができました。ストレスの多い作業を、人の手では不可能なスピードでこなし、人間には時間の余白を与えてくれる。ロボパットにはいつも助けられています。
あとは、スタッフに危機感を与え、積極的な姿勢に変えてくれるのもロボパットのメリットです。
今、社労士業界の課題のひとつとして挙げられるのは、単純作業に時間を取られてしまうこと。ずっとパソコンと向き合い、単純作業をとにかくこなすことが正しいと思ってしまうのは、仕事に追われるビジネスパーソン『あるある』ではないでしょうか?
目の前の作業に追われている状態だと、ブレインを使う本質的な仕事までたどり着けないし、そんな仕事があることにすら気づけません。しかし、労務相談や営業活動、打ち合わせといった、人にしかできない業務こそ価値が高いのです。
そこで、一人ひとりに気づいてもらうため、単純作業をロボットに代行してもらう。すると本人は「私が一生懸命やっていた作業は、ロボットがやると簡単に終わっちゃうのか。ロボットは数万〜十数万円で、私は倍以上給料をもらっているのに」と危機感を抱きます。そして、「ロボットが作業してくれる分、自分は違うことに取り組まないと」と意識が変わるのです。
ロボパットを導入することは、自分をサポートしてくれるパートナーを常に横に置くことと同じ。そのパートナーをうまく動かしながら、自分はさらにステップアップした業務に取り組むという前向きな意識改革ができました。
そうですね。私たちがロボパットを活用するうえで、社内に掲げているのは、「ロボットと一緒に仕事をすることによって、トータルの仕事量を増やそう」です。
人の労働時間は8時間ですが、ロボットは24時間365日稼働してくれます。そんなロボットとタッグを組むことによって、「人間が働く8時間分の業務+ロボットが働く24時間分の業務(フル稼働しているかは別として)」で、仕事量が総合的に増えるのです。
そして、仕事量が増えれば、給料も上がる。人の稼働時間を増やすのではなく、ロボパットをうまく活用した分をスタッフの給料に還元していけたらと思っています。
船井総合研究所が開催する「社労士事務所経営研究会」の事例発表会に参加したとき、とある社労士事務所の方がロボパットについて話しているのを聞きました。そのときは「RPAとは何のこっちゃ」状態だったのですが、帰ってからよく調べてみると、「こんな便利なツールが世の中にあるんだ」と感動しまして。
その日から3日後のロボパット体験会に申し込み、参加しました。そこで「このツールなら、普段のルーティン業務を自動化できる」と確信し、体験会のあとすぐに導入しました。
直感的にシナリオを組めて、すぐにロボットを作れるようになったので、びっくりしました。私は、Excelの関数が使えないレベルで、パソコンの知識があまりありません。それなのに、ロボパットのマニュアルを見なくても、1日でロボットを作れるようになったのです。もちろん、最初は精度が高いロボットではなく、簡単なシナリオのロボットでしたが。
まずは作ってみて、知識を付けつつ、だんだんと高度なロボットに挑戦していく。このような流れで、スキルアップを図ってきました。最初からマニュアルを読み込むのではなく、まずは手を動かしながら慣れていったことがポイントだったかなと思います。
古くてアナログな社労士業界を変えたいからです。この業界は、『自動化』や『効率化』の概念が浸透しておらず、手動作業がほとんどでした。今でこそ社会保険手続きの電子申請システムがありますが、少し前まではみんな紙に書いて申請していたくらいです。当然、最近まで業界内で「RPAツール」という言葉は存在しませんでした。
しかし、私は社労士事務所こそ自動化に向いていると思っています。なぜなら、小さな単純作業が集まっているからです。大きな業務の自動化は果てしなく感じますが、小さな作業を一つひとつ自動化するのはハードルが低いと感じられます。だから、私たちから業界に新しい風を吹かせたくて、自社で活用したり代理店としてロボパットを広めたり、自動化に力を注いできました。
とはいえ新しい考え方はすぐには浸透しないので、代理店としてRPAツールの存在を広めていた初期は、業界の方に拒絶されていた気がします。「そんな難しいのわからない」「ロボットなんてハイテクなもの、うちの事務所には関係ない」と。あのときの悔しかった気持ちは今でも忘れられません。
「ロボパットは業界を変えてくれる存在だ」と熱量高く説明し、実際に公文書ダウンロードロボットを見せました。「公文書ダウンロードは人がやっちゃダメです、夜中にロボットを動かしたら朝までに全部終わってますから」のセリフは、かなり刺さっていました。最初は見向きもしなかった人も、ロボットを見せたら目を丸くしていました。
『自動化ロボット』というワードだけ聞くと、「難しそうだし自分たちには関係ない」と感じてしまいます。そこで、悩みのタネになっている業務を自動化して見せることで、「なるほど、自動化ってこういうことなのか」と気づいてくれるのです。そしたら話はもう早い、「こんな業務は自動化できますか?」と前のめりな姿勢になってくれます。
そんな活動を続けている今、業界が少しずつ変わってきたと感じています。初めてお会いする社労士事務所の方にロボパットの話をしても、すんなりと受け入れられるようになってきました。手前味噌ではありますが、活動の結果、ありがたいことにあすか社会保険労務士法人自体も評価していただけるようになったと自負しています。
私たちがこれまでサポートしてロボパットを導入したのは、30事務所ほど。今後はもっと広めて、社労士業界のデジタル化を進めていきたいです。
「最初から、100%の全自動ロボットを目指すべきではない」とアドバイスしています。実際、多くの社労士事務所が1から100まで自動化しようとチャレンジし、「あるところまで行くと、途中で止まって進まない」と落とし穴にハマっているのです。
100%を目指してつまづくのは、小学1年生が中学生の参考書を見て「できない」と言っているようなもの。小学1年生の勉強、小学2年生の勉強、小学3年生の勉強・・・と段階を踏んでいくべきだと思います。
なので、100%自動化しようとせず、まずは30%くらいを自動化してみてください。物足りないかもしれませんが、事実として0%から30%を自動化し、確実に前進していることには変わりないのですから。
まずはできるところまで挑戦し、だんだんと自動化の域を広げていく。そう繰り返しているうちに、1カ月前には解決できなかった壁を、突破できるようになっているでしょう。
名古屋拠点代表 酒井政徳様
24時間働き続ける、眠らない事務所を作りたいと思っています。人間はきっちり定時で帰り、翌日に出社すると、ロボットが単純業務をすべて終わらせてくれている。そんな夢のような事務所を実現できたら、と考えるとワクワクしませんか?
ロボパットの社内推進や代理店活動に関しては、知識が豊富で積極的に引っ張ってくれる酒井(名古屋拠点の代表)がいてくれたおかげで、ここまで実現できました。次なるミッションは、眠らない事務所を作るため、社内でロボパットを使える人材を増やすことです。
現在ロボットを作れるのは、酒井と私のふたりだけ。お互いに通常業務と並行してシナリオを組んでいるので、スピーディーに自動化を進めるためにも、社内に共感者を作りたいと考えています。
毎日のように「ロボパットでこんな業務を自動化しよう」「こう自動化したことでこんなメリットがあった」と言い続けることで、メンバーに自動化の意識をすり込み、意識付けていく。そして、やりたいと思ったらすぐに挑戦できる環境を整え、社内に「私も自分の業務を自動化してみよう」と主体的に行動するメンバーを増やしていく。
こうして、ロボパットがある日々を、全メンバーにとって当たり前にしていきたいですね。
今、一歩勇気を出して決断できるかどうかが、今後この業界で生き残れるかを決めると思います。「パソコンスキルを持ってないし、難しそう」とできない理由を並べているだけでは、業務はずっとラクにならないまま。まず踏み込んでみないことには、現状は変わりません。実際、あすかもロボパットを導入してから、業務のあり方が大きく変わりました。
もし「ひとりで進めるのはハードルが高いし不安」と感じているのであれば、ぜひご相談ください。同じ社労士として、私たちの経験でお役に立つことがあればサポートします。ロボパットユーザーの社労士事務所を集めてボランタリーチェーンも組んでおり、酒井が気合いを入れてコミュニティ化したサイトを作っているので、そこにもご参加いただけたらと思います。
サイト内は、私たちも含めた事務所同士でコミュニケーションが生まれていて、些細なことでも質問しやすい環境です。あすかが作った「社労夢」と「オフィスステーション」の公文書ダウンロードロボットのシナリオも掲載しているので、そのまま取り込むことで、すぐ使えるようになります。
繰り返しになりますが、社労士業界は古くてアナログです。デジタル化の考えを浸透させることによって、各事務所が活性化し、業界自体の価値が上がっていくはずです。その結果、世の中に社労士を求める会社が増え、お客様の幅を広げられると思っています。
これからも私は、社労士業界のアップデートに全力を尽くしていきたい。業界の革新者として一緒に風穴を開けていける、そんな同志のような社労士事務所をロボパットを通して見つけられたらうれしいです。
佐野 陽彦 パートナー支援部・部長
社労士業界の改革のため、積極的に「ボランタリーチェーンを組む」「社労士業界のデジタル化を進める」といった取り組みをされているのが印象的です。業界の方に拒絶されても諦めない、その前向きな姿勢に私自身が勇気づけられました。これからもあすか様とタッグを組んで、私たちも多くの社労士事務所の業務負担を軽くするサポートができればうれしいです!