知っておきたいRPAの意味
RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略称で、ロボットを使い業務の自動化を行うITツールです。ロボットを使った業務自動化というと、工場や製造所などブルーカラーの現場で活用されるイメージがあるかもしれません。しかし、RPAはホワイトカラーが主にパソコンを使って行う定型業務や単純作業を自動化するソフトウェアロボットです。
日本ではNTTデータが提供する「WinActor」、世界シェアNo.1の「UiPath」などが有名です。
MM総研の調べによると、日本企業のRPA導入率は2016年時点ではまだ3%に過ぎませんでした。しかし、その後は少しずつではあるものの導入が進み、特に年商50億円以上の企業では、2017年(13%)、2018年(36%)と急速に普及しています。
また、年商50億円以下の企業でも2020年には11%まで導入が進み、2022年には年商50億円以上の企業で50%、50億円以下の企業でも28%まで導入率が上がると予測しています。
引用: RPA導入企業が活用を本格化、AI-OCR導入も約2割 ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研 (m2ri.jp)
RPAが自動化できるのはどんな業務?
RPAが得意とする主な業務は次のようなものです。
手順に沿って同じ作業を繰り返す業務
RPAの種類にもよりますが、「社員のタイムカードに記録された就業時間を集計して給与計算を行う」「名刺に記載された情報を営業管理ツールに入力する」といった、一定のルールで繰り返される定型業務の自動化はRPAがもっとも得意としています。
複数のアプリケーションを連携して行う業務
顧客管理ツールで管理している顧客からの問い合わせ内容を、営業管理ツールで顧客別にまとめて入力するといった、複数のアプリケーションを連携して行う業務の自動化を行います。
単純であるもののミスが許されない業務
バックオフィス業務でよくある「取引先へ送る請求書の作成」「資材や商材の発注書作成」など、単純ではあるもののミスをすると自社に大きな損害を生み出してしまうような業務の自動化もRPAの得意分野です。
深夜や休日、繁忙期に集中する業務
例えば、「ネットショップで新商品発売初日の受注管理業務」「販売した商品の問い合わせ対応」など、社員の手作業での対応が難しい、深夜や休日、繁忙期に集中する業務もRPAであれば24時間休みなく対応可能です。
「AI(人工知能)」や「VBA・マクロ」との違いは?
業務の自動化を行うという点では、AI(人工知能)やVBA、マクロなどでも似たようなことが行えるため、混同される方も多いかもしれません。それぞれのツールとRPAとの違いについて、比較しながらご説明します。
AI(人工知能)との違い
RPAとAIのもっとも異なる点は、AIが自ら学習を行なって人間の代わりにさまざまな処理を実行していくのに対し、RPAは人間が設定した作業のみを行う点です。
自らが学習し、業務を習得していくという点だけを見ればAIのほうがメリットは大きいかもしれません。しかし、学習を重ねていかなければならないため、正確な判断を行えるようになるまでには多くの時間を要します。
これに対し、RPAは人が設定した業務を忠実に実行するツールです。設定さえ正しく行えばすぐに自動化が実現するため、費用も安価で導入が容易というメリットがあります。
VBAやマクロとの違い
次に、VBAやマクロとの違いについて見ていきましょう。
まず、VBAはWordやExcel、PowerPointなどOfficeアプリ限定の拡張機能で、それらのアプリが行う定型業務の自動化を行うものです。これに対し、RPAはパソコンを使ったほとんどの操作を自動化できる点が大きな違いといえます。RPAの製品によっては基幹システムやEPAといった社内システムまで幅広く自動化することが可能です。
続いてマクロですが、マクロもExcelで行う業務の自動化を行えるものですが、もう少し幅が広く、パソコンの自動化機能全般を指すものです。アプリが繰り返し行う操作を記録しておき、ボタン1つで自動処理を行う点ではRPAも同様ですが、異なるのは、マクロが行える自動化は1つのアプリに限定される点です。
複数のアプリで業務を自動化させるには、それぞれ対象のアプリでマクロの設定が必要になります。これに対し、RPAは業務の一連の流れをすべて1つの設定で自動化できるため、複数のアプリケーションでそれぞれ設定を行う必要はありません。
なぜRPAは注目を集めているのか?
RPAが注目を集め、急速に導入が拡大している背景理由はいくつか考えられます。そのなかでも大きいのは、政府が推し進める働き方改革やそれを実現するために欠かせないDXを可能にするうえで、RPAが貢献する点です。
働き方改革の柱の1つでもある長時間労働の是正を実現するには、業務効率化を果たしつつ、生産性を向上させなければなりません。また、DXを進めていくには、新事業や
新製品の開発などに専念できる人材の確保が必須です。
RPAは定型業務の自動化により、業務効率化を実現するともに、生産性の高い業務、新たな事業や製品開発に専念することを可能にします。そうした意味で、働き方改革を進め、DXの実現に大きく貢献するRPAに注目が集めっているのです。
RPAの動作の仕組み
RPAは人が手作業で行う業務を順番に設定していくことで覚えさせます。例えば、販売管理ツールにある受注書を月単位でまとめて請求書を作成する場合で見ていきましょう。
- 販売管理ツールにID、パスワードを入力し、ログインする
- 任意の取引先コード、月で検索し、当月の受注書を集計する
- 経理管理ツールにID、パスワードを入力し、ログインする
- 集計したデータをもとに取引先ごとに請求書を作成する
こうした一連の流れを操作しながらRPAに設定していくと、次からはボタン1つで上記の手順に沿ってRPAが自動で請求書作成を行います。そのため、簡単な業務であれば、プログラミング技術がなくてもロボットのシナリオ作成が可能です。
RPAの具体的な活用例
これまでに挙げてきたほかにRPAが自動化する業務の主な例としては、次のようなものがあります。
競合の商品情報収集
定期的にWebサイトを巡回(クローリング)し、競合企業のWebサイトから新商品のスペック、価格などを抜き出してきて、Excelに一覧表を作成する
資材、消費の自動発注
商品管理システムで在庫が一定数にまで減った資材、商品を自動で発注する
顧客の問い合わせ履歴表示
カスタマーサポートで問い合わせやクレームメールが来た際、顧客管理ツールのメールアドレスと照合し、過去の問い合わせややり取りを抽出して表示させる
登録や申請の審査
企業の会員登録や金融でのローン申請などで申請書を照合し、自動で審査を行う
請求書の自動送信
自動で作成した請求書をPDFで発行し、取引先へメールで送信する
RPA導入には意味がある?重要なメリットとは
前出のMM総研の調査では、年商50億以上の大企業ではかなり導入も進んでいるものの、50億円以下の企業では、まだそれほど導入の速度は上がっていません。しかし、企業規模にかかわらず、RPAの導入は企業にとってさまざまなメリットをもたらします。特に次の4点については、RPAは、むしろ中小規模の企業だからこそ導入を進めるべきソリューションといえるポイントです。
生産性の向上
RPAのメリットとして大きいのが生産性の向上です。RPAが生産性向上を実現する要因は、これまで多くの時間を割かれていた定型業務が指示に沿って自動化され、手作業で行う必要がなくなる点にあります。
例えば、請求書を作成・印刷・折りたたみ・封入・郵送といった一連の業務は、企業規模により、2~3人で丸2日かけて行うといったケースも少なくありません。しかし、ペーパーレス化が前提ではあるものの、RPAを使い、作成・PDFで発行・メールで取引先に送付までをすべて自動化すれば、人の手を使わずほんの数時間で終了します。
これにより、コスト削減が進むと同時に、これまでかかっていた時間を生産性の高い仕事にあてれば、自ずと生産性向上が実現するでしょう。
人手不足の解消
定型業務の自動化は、社員が生産性の高い仕事に集中できるようになる以外にも大きなメリットがあります。それは、人手不足の解消です。日本は世界に類を見ない速度で少子高齢化が進んでいます。
生産年齢人口の減少はもはや避けることはできず、今後はこれまでよりも少ない人数でこれまでと同様の生産性を実現しないと企業として生き残っていくののも困難です。
少ない人数でこれまでと同様の生産性を上げるには、業務改善が欠かせませんが、それを実現するのがRPAです。
ミスの防止
人の手で行うとどうしても発生してしまいがちなミスが防げるようになる点もRPAのメリットといえるでしょう。
データ入力や請求書、発注書の作成など手作業ではケアレスミスがつきものです。しかし、RPAであればロボットが業務を行うため、基本的にケアレスミスはありません。
品質の向上
定型業務の自動化は、業務品質、製品品質の向上にも大きく貢献します。前述したように、ロボットが業務を行うため、操作間違いや手順漏れがありません。
また、人であれば、疲労や集中力低下があり、長時間同じクオリティの業務を継続するのは困難です。しかし、これもRPAであれば常に高いクオリティで業務を遂行します。これにより、業務品質、製品品質が向上し、さらに生産性が高まるでしょう。
RPA導入のコツとは?
企業にさまざまなメリットをもたらすRPA。しかし、闇雲に導入を進めても思ったようなメリットを享受することは難しいでしょう。
なぜなら、ひと口にRPAといってもさまざまな種類があり、自社に適応したものを選択しないと意味がないからです。また、社内の理解を得ていないとRPAの力を最大限発揮させられないでしょう。そこで、RPAを導入し、成果を挙げるためのコツをご紹介します。
RPAに適した作業を自動化しよう
RPAには得意な業務と不得意な業務があります。得意な業務にかんしては、先述したように「手順に沿って同じ作業を繰り返す業務」「複数のアプリケーションを連携して行う業務」「単純であるもののミスが許されない業務」などです。
これに対し、不得意とする業務は、「頻繁にイレギュラーなことが発生する業務」「業務のなかで人の判断が必要となる業務」「定型業務であってもパソコンを使わない業務」などです。
RPAを導入する際は、RPAの特性を把握したうえで、RPAが得意とする業務がどれだけあるのか、事前に業務の棚卸をし、ワークフローの最適化をすることをおすすめします。
社内に浸透させるための体制をつくろう
RPAの導入は進んではいるものの、まだ一般的とまではいえないため、自社のなかには導入に懐疑的な社員もいるかもしれません。そうした社員が多いと導入したとしても、なかなか効果的な運用は難しいでしょう。
そこで、対策としては、「導入に興味を持っている層を味方につけ、担当者に任命する」「スモールスタートで小さな成功体験を積み上げる」「現場の人間が簡単に扱えるRPAを使う」などが挙げられます。少しずつ、協力者を増やしていくことがポイントといえるでしょう。
ベンダーのサポートを活用しよう
RPAを選択する際は、売ったらそれで終わりといったベンダーではなく、導入や運用のサポート体制が充実したベンダーを選択し、最大限利用するようにします。
自社の社員に対する教育や扱い方の研修を積極的に行なってくれるベンダーを選択すれば、RPAの機能を最大限の活用できます。
まとめ
今、働き方改革やDXを実現するためのツールの1つとして大きな注目を集めているRPA。しかし、まだ導入に懐疑的な経営層や社員がいることも確かです。そのため、導入に際しては、「RPAの特性をしっかりと把握する」「社内に少しずる協力者を増やしていく」「運用を積極的にサポートしてくれるベンダーを選択する」という3つのポイントを押さえることが重要です。
そして、導入後は、まず一部の部署からスモールスタートで成功体験を積み重ね、RPAの効果をアピールしていくことも忘れてはなりません。実際に成果を上げれば自然と協力者も増え、高い効果も期待できるようになるでしょう。
RPAの選択は、先述したとおりですが、特に重要なポイントとなるのがベンダーのサポート体制です。「勉強会や研修を実施している」「困ったことがあった際にはすぐに相談に乗ってくれる」など、RPAを活用するためのサポートが付いているか確認しましょう。
どのRPAが自社に適しているか、なかなか選定できない場合は、まずはFCEプロセス&テクノロジーまでお気軽にお問い合わせください。
RPA「ロボパットDX」は、現場の人員でも扱いやすい機能をと操作性を実現しているだけでなく、ロボット作成者の育成支援や業務効率化のコンサルティングなど、無料のサポート体制が充実しています。
業種毎の導入事例が豊富なロボパットDXについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらをチェックしてみてください。