DXとは?
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱した概念です。経産省の「DX 推進指標」では、DXを以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
一方、情報処理推進機構(IPA)が「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」で提唱したDXの定義は、以下の通りです。
「AI や IoT などの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること」
引用:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査
つまり、DXとは単にデジタル技術を活用して業務効率や生産性を向上させるだけではなく、新たなビジネスモデルの創出で競争力を上げる取り組みだということです。
DXを推進すべき理由・重要性
「なぜDXが企業の成長戦略にとって必要なのか」を理解するために、日本におけるDXの現状と、これから日本企業がDXを推進すべき理由を解説します。
「2025年の崖」への対応
日本企業がDXを推進する理由のひとつとして、よく挙げられるのが「2025年の崖」です。2025年の崖とは、経済産業省が2018年9月7日に発表した「DXレポート:ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」の中で発表した提言です。
参考:DXレポート:ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開
「2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じると予測される」というショッキングな内容は、多くの日本企業に衝撃を与えました。一方、日本企業のDXが実現されることで、2030年には実質GDPを130兆円ほど押し上げることが可能とも提言されています。
現状、多くの日本企業が大規模で複雑なレガシーシステムを中核に据えた事業展開を行なっているのが一般的です。そのため、業務フローの改善や追加回収を行おうとする場合には、大きな工数とコストが発生するため、既存のビジネスモデルや業務フローの変革が難しくなります。
日本企業には、DXの実現で業務フローを根本的に見直し、効率化やビジネスモデルの変革を行うことが求められているのです。
市場における競争優位性を向上させるため
次に、日本企業がDXを推進するべき理由が、他社との差別化を図って市場優位性を向上する必要があることです。
世界に目を向けると、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)やUberなどに代表されるIT企業が、最新のデジタル技術による新たなビジネスモデルの創出で市場を席捲しています。
例えば、Uberは個人の車を複数人でシェアするアプリをリリースし、車を「1人で所有するもの」から「皆で共有するもの」へ変化させました。そのうえで、持ち主にはインセンティブというメリット、利用者には安く気軽に移動できるメリットを提示したのです。一方でタクシー業界は大きな打撃を受け、ビジネスモデルの変革が求められています。
さらに、Uberはシェアという概念を外食産業に応用して「Uber Eats」のサービスをリリースし、市場を変革に加えて消費者の生活をより便利なものへ変えました。こうしたサービスの実現に必要不可欠なものが、最新のデジタル技術です。
現在では、業務効率化やビジネスモデルを変革するうえで、デジタル技術の活用が不可欠です。したがって、日本企業にはデジタル技術に柔軟に対応できるようにするためにも、DX推進が求められています。
DX戦略を導入するメリット
企業がDX戦略を導入することで、以下の3つのメリットが得られます。
- 業務効率化と生産性向上が見込める
- 顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる
- 新たなビジネスモデルを生み出せる
業務効率化と生産性向上が見込める
DX戦略の根本となる取り組みは、企業が保有するアナログデータをデジタル化し、ITシステムに集約することです。業務をデジタル化する際は、既存の業務内容などの棚卸が必要となり、その過程で業務の自動化や省力化が行われます。
結果的に、業務効率と生産性が向上し、従業員のエンゲージメントを改善することにもつながります。
顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる
近年では、ユーザーの関心やニーズは多様化しており、従来のマーケティングや分析の手法が通用しないケースが増えています。移り変わるビジネス環境や顧客行動に対応するためには、デジタル技術を駆使したDX戦略が欠かせません。
企業がDX戦略を導入することで、AIやビッグデータを活用した、高度な分析を行って適切やアプローチが行えるようになります。
新たなビジネスモデルを生み出せる
前述したように、企業を取り巻くビジネス環境は目まぐるしく変化しています。そこでDX戦略を導入することで、市場や顧客のニーズに合う商品やサービスを生み出しやすくなります。その結果、従来にはない画期的な価値を生み出すことができ、競合他社との差別化にもつながるでしょう。
DX戦略を立てるポイントとは?
日本企業がDXを推進するためには、経営戦略の立案が不可欠です。しかし、実際には「どうやって進めたらよいかわからない」という方も多いので、戦略立案のポイントを解説します。
改めて「戦略」の位置付けを整理
まず「戦略」とは何か理解しておく必要があります。戦略とは、経営理念に基づいたビジョンを達成するための具体的な戦い方を示すものです。
つまり「経営理念」→「ビジョン」→「戦略」→「戦術」というピラミッド構造になっており、それぞれに一貫性があることが求められます。
経営理念とは、簡単に説明すると企業の存在意義を示すものです。そして、企業が将来的に実現したいことがビジョンになります。さらに、ビジョンを深堀して、どのように実現していくのかという戦術を練り、具体的な実施方法である戦術を使って実現するわけです。
したがって、DX戦略を立案する場合には、まず企業のビジョンを明確化することからはじめる必要があります。
まずはビジョンを明確化
DX戦略の立案にあたっては、DXを推進することで何を実現したいのかというビジョンを経営層自らが明確化することがスタートです。
したがって、経営者が情報システム部門などに「DX推進して」という丸投げ状態の企業は、DX化に失敗する可能性が高いといえます。また、社内のリソースだけにこだわらず、社外と柔軟に連携する体制の構築も必須です。
DX推進のビジョンを立案する際には、以下のポイントを意識しましょう。
- 目標を明確化する
- ビジョンの社内外への周知
- 自社の強みを理解する
まず、DX推進で実現したい目標を、できる限り具体的に決めます。「生産性を向上する」「新たなビジネスモデルを構築する」といった曖昧な目標ではなく、「〇〇年までに売上を200%向上させる」「社内工数を〇〇年までに50%削減する」といった時期と効果を明確化することが重要です。
一方で、ビジョンの内容を社内スタッフだけでなく、取引先や顧客など外部にも周知していくこともポイントになります。全社一丸となってDXを推進する意思表明をすることで、プロジェクトがスムーズに進められるでしょう。
そして、最後に自社の強みを俯瞰することも大切です。市場における自社にポジションや競合の状況を把握しておくことで、打つべき施策が変わってきます。
自社の課題点を洗い出す
次に、DXを推進するうえで障壁になりそうな点や、自社や市場における課題を明確化しましょう。
自社の生産性向上を妨げる要因の分析や体制の見直し。また、自社サービスや商品が抱える課題などあらゆる視点で客観的に見直す必要があります。特に日本企業が先ほど紹介したレガシーシステムからの脱却が、大きな課題になるでしょう。
ビジョン達成のための戦略立案
可視化した自社の強みと弱みを考慮し、ビジョンを実現するための戦略に落としこんでいきます。
ここで重要なポイントが、自社の強みを活かし市場優位性を実現するために、「デジタル技術をどのように使って独自性を出していけるか」です。他社とはまったく違う業務遂行方法やビジネスモデルの構築を、どのような戦略で実現できるのか検討しなくてはいけません。
その際、現在の戦略は根本的に見直す覚悟が必要です。従来のシステムに縛られて、なかなか変革ができない組織では、DX実現は難しいでしょう。
具体的な戦術の決定
戦略が立案できたら、それらを実現するための具体的な方法を検討します。
目標を達成するために必要なデジタル技術やツールの精査や、必要に応じてアライアンス先などの検討も行いましょう。また、業務フローの根本的な見直しはもちろん、社内体制や評価制度の変更なども視野に入れて検討することが重要です。
なお、戦略や戦術を具体的に仕組みに落とし込む段階であれば、コンサルなど外部の力を借りることも有効でしょう。
DX戦略を立てる際に気をつけるべきこと
DX戦略を立案する場合には、以下3つのポイントに注意しながら進めましょう。
DXには全社的な変革が必要
前述した通り、DXを実現して企業全体の生産性を上げるためには、全社的な変革が必要不可欠です。そのためには、まず経営陣が率先して「DXを実現する」という強い意志を示す必要性があります。
したがって、一部の経営者だけでDXを推進しようとするのではなく、経営者間の温度感を合わせ、一丸となって実現に向けて動くという意識改革が必要です。その際、社内で抵抗勢力が生まれる可能性もあるでしょう。
しかし、DXを実現するという強い意志のもと、社内の意識を統一するための施策を準備して、これを解決する算段を立てておかなくてはいけません。そのうえで、従業員全員にビジョンや戦略を周知して、DXを進めていく必要があるのです。
データに基づいたDX戦略を立てる
DX戦略を立案する際は、必ずデータ分析に基づいたファクトやシミュレーションをベースに、判断を行うようにしましょう。つまり、憶測で戦略を立てないことを心がける必要があるということです。
経営者の中には、これまで事業をけん引してきたという自負から、勘などに頼った判断をする方もいます。また、現場で作業を行うスタッフの中には、長年の経験から「こうするべきだ」と強い発言力を持つケースもあるでしょう。
しかし、明確な数値やデータがない場合には、効果測定ができないため判断基準としては弱いことを認識する必要があります。したがって、DX戦略を立てる際は、できる限り多くのデータを集めて分析を行なったうえで、施策を検討していきましょう。
妥当性のない情報だけで戦略を立ててしまった場合は、成功しても失敗しても原因がわかりづらく、短絡的な施策に終わってしまう可能性が高くなります。
DX推進のための予算を確保する
DX戦略を策定したとしても、その戦略を実行に移すための資金がなければ、企業のDXは実現できません。実際に、DXを十分に推進できていない企業の多くが、予算が不足している傾向があるといわれています。特に、ビジネスモデルの改革や新規事業を目指す場合は、アジャイル手法を取り入れることが多いため、他事業に影響されない個別の予算を確保することが重要です。
ITスキルや知識がある人材を確保・育成する
DX戦略の策定・実現を行うためには、IT技術に精通している人材を社内で確保する必要があります。重要なポイントは、単にITの知識があるだけではなく、自社のビジネスや商材に関する理解も求められます。こうした背景から、DX人材を確保できていない企業が珍しくありません。
新規雇用や外部パートナーへの依頼以外に、社内の人材を育成するのもひとつの手です。ビジネススキルに長けた従業員をDX人材に育成することで、ビジネスモデルの改革や新たな価値の創造といった、DX戦略の本来の目的を達成しやすくなるでしょう。
まずは小規模で開始する
多くの時間を使って立案したビジョン・戦略・戦術ですが、絶対にこれが成功すると過信することは危険です。
さまざまな分析を行い、それなりの妥当性がある施策を立案した場合でも、必ず成功するという保証はありません。そのため、まずは小規模に施策をスタートして、実証実験を進めながらPDCA(計画、実行、評価、改善)を回していく活動が有効です。
小さな施策をいくつか実施するなかで、成功も失敗もあると思います。しかし、すぐに軌道修正を行ってトライアルを繰り返すことで、成功の確率を高めることが可能です。小規模なものでも、成功すれば全社的な改革をすすめる上での基盤となります。
また、DX施策はすぐに効果が出るものが少ないという点も覚えておきましょう。よって、できるだけ短期に結果が出る施策に絞って実証実験を行うことで、戦略の妥当性を確認することも重要なポイントです。
近年は市場の先が読みづらい状況になっているため、企業側には柔軟な対応が求められており、それはDX戦略も同じです。状況を冷静に分析して、戦略をアップデートしていく体制が必要になります。
DX戦略の実現に有効なRPA
DX戦略はデータ分析に基づいた施策を、スモールスタートで行うことが成功の秘訣です。しかし、どのようなデジタルツールを導入して、実践すればよいのか迷う方もいると思います。
そこでおすすめしたいデジタルツールが「RPA」です。RPAは人がパソコンで行なっている定型業務をソフトウェアロボットに代替させることで自動化できるツールで、DXの第一歩に最適なソリューションとも言われます。
中でも「ロボパットDX」は、プログラマーやエンジニアではない非デジタル人材でも、扱いやすいRPAツールのため、現場でDXをスモールスタートするために最適です。経理、総務などのバックオフィス業務の自動化にも多くの企業で活用されています。
本記事を読んでDXを推進しようとする方には、RPAの導入をおすすめします。RPAを切り口にDXへの取り組み行っている企業の事例も多数ご用意しています。興味が湧いた方は、ぜひこちらからお気軽にご相談ください。