「生産性向上」とはつまりどういうことか?
「生産性向上」とはいうものの、そもそもどのような状態を指すことなのかわかっていない方も多いと思います。そのため、どのような状態になれば生産性が向上したといえるのか、理解しておくことが先決です。
まず生産性とは、一定のリソースに対する成果の割合のことです。例えば、5人のスタッフが8時間作業を行なって、100個の商品を作ったという時間とコストに対する成果の達成度合いになります。
したがって、生産性向上とは5人で8時間の作業で100個の製品を作っていた場合、200個の商品が作れるようになれば生産性が2倍になったということです。つまり、同一リソースでより高い成果を上げた状態が、生産性向上といえます。
一方、生産性向上と似た言葉に「業務効率化」があるのですが、こちらは同一の成果を出すために、業務時間や作業時間の削減など必要なリソースを減らす活動のことを意味するため、厳密には違うものです。しかし、生産性を向上するためには、業務効率化の視点も重要になります。
業務の生産性や効率に関する課題が山積み
生産性向上や業務効率化をしたくない企業はないといっても過言ではありませんが、実際にはなかなかうまく進められないというのが現状です。
日本は少子高齢化の影響で労働人口が年々減少傾向にあるため、企業における人材確保が以前にくらべ厳しい状況になっています。一方で、転職活動には最適な環境ともいえますので、社員の定着率が下がっている点も大きな課題です。
社員の定着率が下がると、人材育成を行なってもスキルアップした段階で辞められてしまったり、技術やノウハウがブラックボックス化したりするリスクが発生します。さらに、単純作業や長時間労働を強いられる企業や業界においては、人材の流出に歯止めがかからない状況です。そのため、通常業務を回すだけで手いっぱいで、生産性向上や業務効率化を行う余裕すらないところも多いでしょう。
極めつけは、日本企業の多くが抱えるレガシーシステムの存在です。長期間の開発と運用を繰り返した結果、大規模で複雑化したシステムがあらゆる業務に関わっているため、ちょっとした業務改善を行う場合でも影響範囲が大きくなり、改修しづらくコストも大きくなるという問題があります。
そのような背景から、多くの日本企業が業務フローやビジネスモデルを根本的に見直して生産性を上げるために、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に注力しています。そして、DX実現に不可欠なもののひとつがITツールです。
生産性向上に向けてITツールを活用する4つのメリット
ITツールは以下のような理由から、生産性向上に有効だといえます。
作業効率が向上
ITツールを導入するひ一つめのメリットは、なんといっても作業効率が明確に向上する点でしょう。
これまでスタッフが行なっていた作業をITツールに代替させることで、作業スピードが上がり、業務効率化につながります。また、スタッフが作業を行うとヒューマンエラーにより作業の手戻りが発生する可能性がありますが、ITツールであれば正確な作業が行えるため、ミスの抑制効果も期待できるでしょう。
コスト削減
ITツールを導入することでペーパーレス化が進められれば、紙代や印刷代はもちろん、押印だけのために出社するといった人件費や交通費のコスト削減につながります。また、Web会議ツールやクラウドサービスを導入することでテレワークが実現できれば、オフィスの縮小も可能になるため、家賃や出勤費の削減も可能です。
多様な働き方が実現
ITツールの活用でテレワークが実現できた場合、スタッフは在宅勤務が可能になり、育児や介護をしている方でも働きやすい労働環境が実現できます。また、首都圏では通勤ラッシュの問題に加え、2020年以降は新型コロナウイルスの影響でテレワークの需要が高まっている状況です。
テレワークができることはすでに定番化しているため、逆に未対応の会社はスタッフのモチベーションやエンゲージメントが下がって離職率が高まったり、就職・転職時に選ばれにくくなったりするリスクが高まるでしょう。多様な働き方ができる労働環境をつくることは、スタッフのワークライフバランスの充実にもつながり、生産性向上の実現には欠かせない要素といえます。
さらに、場所を選ばないテレワークが実現できれば、日本中だけでなく海外のスタッフでも問題なく業務を遂行できますので、多様な働き方が可能になるのです。
ITツールは手軽に導入して試せる
生産性を向上させるために、自社でシステム開発などを行う場合には、大きな設備投資が必要になります。場合によっては、数円万円以上必要なこともあるうえに、生産性向上効果は導入するまでわからない部分も多く、簡単には実施できないでしょう。
しかし、ITツールであれば、数万円程度で導入できるものも多いため、手軽に導入して効果検証ができる点がメリットです。また、多くのITツールが無料トライアル期間を設けているため、自社の生産性向上につながるかどうか導入前に確認できます。
同じような目的のITツールがさまざまなベンダーから提供されていますが、比較検討もしやすいので、自社に最適なものを選びやすく、生産性向上や業務効率化につなげやすい点が大きなメリットです。
生産性向上につながるITツールの例
ここからは生産性向上や業務効率化に役立つ、一般的なITツールの例を紹介します。
ビジネスチャット・Web会議ツール
リモートワークを実現するためにはビジネスチャットとWeb会議ツールの導入が必須です。
ビジネスチャットとは「Slack」や「chatwork」などに代表されるチャットツールで、チャットによるコミュニケーションが可能になるだけでなく、プロジェクトやメンバーごとにグルーピングもできますので、メンバー同士が連携して業務を進めることができます。とてもシンプルな設計のものが多く、すぐに使えるようになる点もチャットツールの利点です。また、チャットツールは社内コミュニケーションを活性化させ、アイデアが出やすくなるといった利点もあります。
一方「zoom」や「Skype」などに代表されるWeb会議ツールは、複数の拠点をインターネット経由で結ぶことでオンラインミーティングが可能になるコミュニケーションツールです。チャット機能も搭載されており、Web会議をしながらURLを共有したり、投票をするなどいろいろな使い方が可能です。個人でも契約できる、スマホやタブレットでも使用可能など、大変使い勝手のよいツールです。
昨今の新型コロナウィルスの影響もあり、「zoom」のユーザー数は世界中で増加し続け、現在では一日数億人とも言われています。
これらのITツールを導入することで、場所を選ばずに仕事や会議ができるようになるため、スピーディーに仕事が行えるだけでなく、移動時間や交通費の削減効果も期待できますので、生産性の向上につなげやすいでしょう。
RPA
働き方改革による労働時間の見直しや勤務形態の多様化などから現在非常に注目されているツールです。
RPAとは「Robotics Process Automation」の略語で、人がPCで行う定型作業をロボットに代替することで、自動化できるITツールです。例えば、Excelのデータ入力や集計作業、社内システムからデータをダウンロードして保存する作業、定型文のメールを自動送信、請求書などの自動発行といった作業などは、RPAで自動化できます。RPAの種類は、「デスクトップ型」「サーバー型」「クラウド型」などに分かれており、それぞれに特徴が違います。自社の用途に合わせて適したRPAを選択することが大切です。
RPAで作業を自動化できれば、工数が大幅に削減できますので、スタッフの負担や残業を軽減することが可能です。また、ロボットによる正確な作業が実現できますので、ミスの抑制につながり作業の質も向上します。
さらに、RPAは製品によってはドラッグ&ドロップでシナリオが作成できるなど、操作性に優れたものも増えてきました。それらのRPAはITリテラシーが低い方でも使えるため、現場のスタッフ主導で、業務効率化や生産性向上を実現できる点も大きなメリットだといえるでしょう。
ファイル管理ツール
リモートワークを実現するためには、メンバー間でのファイル共有や編集ができるファイル管理ツールの導入も必須です。「Google ドライブ」や「Dropbox」といったファイル管理ツールを活用すれば、社内社外を問わずスタッフ間での資料の共有や編集がスムーズになりますので、インターネットにつながる環境であればどこでも働けるようになります。
また、パソコンなどにデータを入れて持ち歩く必要もなく、添付ファイルのやりとりも必要ないため、盗難や紛失によって機密情報が漏洩するリスクに対しても安心です。
プロジェクト管理・タスク管理ツール
プロジェクトの進捗管理をメンバー間で実施する「Backlog」や「Trello」などのプロジェクト管理ツールやタスク管理ツールも、リモートワークを実施するうえではなくてはならないITツールのひとつです。
プロジェクトの進捗をチームメンバー間で共有し一元管理できますので、タスク漏れや遅延防止に役立つでしょう。タスクが画面上のボードでひとめでわかる、ワークフローやスケジュールがガントチャートで表示されるなど視覚的にもわかりやすくなるようさまざまな工夫がされています。プロジェクトの進捗が一目瞭然のため、進捗報告会などの無駄な会議を減らすこともできます。
営業支援ツール(SFA)
営業支援ツールとは、各営業社員の営業活動を可視化させ、商談の進捗状況と結果を蓄積・管理することを主目的としたツールです。セールスプロセスにあわせて、全体や営業毎の売上の進捗をグラフでわかりやすく表示するなど、自社にあわせたカスタマイズが可能です。
このツールを活用すると、顧客情報は一元で集中して管理されるようになり、例えば取引先の担当者が変更した際の引継ぎ状況や、これまでの商談内容がクラウド上で共有され、一覧で把握できるようになります。
その結果、仮に自社の担当者がいない際に問い合わせがあっても、すぐにほかの社員が対応できたりと迅速な問題解決が可能です。
また、営業社員は基本的に外出していることが多く、社員同士での情報共有がほかの部署に比べて困難になるケースも珍しくありません。しかし、営業支援ツールを活用すれば、ほかの営業社員の状況もすぐに確認できます。
そのため、外出先でトラブルが起きてもすぐにほかの社員がサポートに回ることができ、万が一の状況が生まれにくくなるでしょう。
顧客管理ツール(CRM)
営業支援ツールは営業活動を支援するためのツールですが、顧客管理ツールは、顧客との関係性を管理するためのツールです。ただ、主に営業社員が活用するケースが大多く、同じような機能があるため、混同してしまうケースも少なくないでしょう。
異なる点は、営業支援ツールが各営業社員の抱えている案件をベースに業務を支援するツールである点に対し、顧客管理ツールは顧客との関係性強化に特化したツールである点です。
具体的な機能としては、「顧客情報の蓄積・管理」「商談の日時・内容の管理」「顧客の取引状況に応じた自動メール配信」「問い合わせ内容の蓄積・管理」などがあります。これらの機能を活用し、主に既存顧客とのやり取りを効率化し、関係性を強化するためのツールです。
マーケティングオートメーション(MA)
顧客管理ツールが主に既存顧客との関係性強化を実現するツールなのに対し、マーケティングオートメーションツールは、効率的に新規顧客獲得を獲得するための施策を展開するツールです。具体的には、自社のWebサイトに訪問したユーザー、展示会で名刺交換をした企業といった見込み顧客に対するアプローチを自動化するものです。
主な機能は、顧客の「興味関心」「比較検討」などの段階に応じて適切なメッセージの配信や、Webサイトに訪問するユーザーに向けたコンテンツ作成機能です。また、訪問ユーザーの行動を追跡し、何に興味を持っているかを把握するトラッキング機能なども特徴的です。
先述した営業支援ツールや顧客管理ツールと連動させ、見込み顧客から新規顧客、そして既存顧客へとスムーズな引継ぎも可能にし、効率的に営業活動をサポートしてくれます。
グループウェア
グループウェアとは「Microsoft Office 365」や「Google Workspace」のような、メーラーや表計算・プレゼンテーション、Web会議ツールといった業務に必要なアプリケーションが一式そろったITツールです。グループウェアを導入すれば、ほとんどの事務作業やWeb会議などのコミュニケーションが完結できますので、今や業務上必要不可欠なツールだといっても過言ではないでしょう。日報のフォーマットや勤怠管理などさまざまな管理機能を持っている製品も多く、バックオフィスの手間も削減します。
ここまでに紹介した多くの機能が包含されているので、今後ITツールを導入しようとする企業にも最適です。
電子契約サービス
2020年に新型コロナウイルスの影響でリモートワークが一気に浸透した際、ハンコを押すためだけに出社が必要、という状況に陥った企業が多数ありました。その影響もあり、対策としてクラウド上で契約書などのやり取りや締結作業が行える「クラウドサイン」や「DocuSign」などの電子契約サービスが注目されています。
電子契約サービスを導入することで、デジタル契約書の押印が可能になり、スピーディーに契約が締結できるようになります。また、書類が電子化されることで申請や承認作業が軽減されると同時に、ファイル管理が効率化できるところも便利な点です。紙や印紙代などのコストカットにもつながります。
名刺管理ツール
「Sansan」や「CAMCARD」に代表される名刺管理ツールも、営業活動を効率化させる有効なITツールです。スマホのカメラで名刺を取り込みクラウド上で名刺情報を一元管理できますので、名刺交換していないスタッフであっても、顧客とすぐに連絡を取ることが可能になります。
また、最近はWeb会議上で名刺交換ができるオンライン名刺交換機能も備わっています。名刺管理ツールのデータは名刺交換したスタッフが退職した後も保存できますので、人脈を維持できる点もメリットです。
生産性向上に向けたITツール選びの3つのポイントとは?
ITツールは以下3つのポイントに留意して導入を検討しましょう。
自社の課題解決につながるか
単に流行っているからといった理由で、さまざまなITツールを導入しても社内の実情に合わず、うまくいかない可能性があるでしょう。やみくもに導入しても、それが自社の利益につながるどころか、生産性を阻害するという本末転倒になりかねません。
ITツールの導入では、まず生産性が上がらない要因をみつけ、その解決策になるツールを優先順位をつけて適切に導入することが重要です。
ITツールの選定に入る前に、業務の棚卸しや課題点の洗い出しなどの現状把握を行う必要があります。そのうえで、最適なITツールの候補を挙げて、無料トライアルや無料プランを利用しながら試していく方法がおすすめです。
誰もが使いやすい設計になっているか
現場のスタッフが使いこなせないITツールの導入も避けましょう。現場の従業員が使えないITツールは社内に浸透しないため、業務効率化や生産性向上につながる可能性が低くなるからです。
ITツールを導入する場合には、現場スタッフが使いやすいかどうか、教育のためのマニュアルが充実しているかなどのポイントを押さえることが重要になります。
全社導入の前にまずはスモールスタート
無料トライアル期間などを活用して、業務効率化や生産性向上につながりそうなITツールが絞り込めたら、まずは特定の部門に絞って導入するようにしましょう。いきなり複数の部門でITツールを導入すると、失敗したときのリスクが高くなります。
特定の部門で導入して業務効率化の一定効果が見えた段階で、その結果とノウハウを活用し、全体へと徐々に導入していくことが得策です。つまり、全社導入の前にまずはスモールスタートにすることが、ITツールで生産性を上げるコツといえます。
生産性向上に不可欠なITツール
企業の業務効率化や生産性向上には、以下4つのメリットがあるITツールの導入が有効です。
・作業効率が向上
・コスト削減
・多様な働き方が実現
・ITツールは手軽に導入して試せる
自社の業務フローや課題を可視化したうえで、最適なITツールを選びましょう。なお、直接的に作業の効率化を行いたいという企業には、今回紹介したRPAがおすすめです。
なかでもRPAツール「ロボパットDX」は「現場が自分で業務を自動化する」ことにこだわって開発されたRPAで、以下の特長があります。
・プログラミング知識が一切不要、画像認識で直感的な操作が可能
・あらゆるツールやアプリケーションで操作可能
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