いま話題の「DX」とは?
DXとは「Digital Transformation」の略語で、日本語では「デジタルによる変革や変容」と訳されるITワードです。最新のITツールやテクノロジーを活用することで、企業の業務効率化や生産性向上を促して市場における競争力を高め、収益向上につなげるだけでなく、そこから生まれたサービスやプロダクトによって人々の生活をより便利で豊かなものへと変容させることを目的とした活動といえるでしょう。
ちなみに、日本政府も少子高齢化による労働人口の減少を危惧し、その解決策として日本企業にDX推進をおこなうように呼び掛けています。なお、経済産業省が掲げるDXの定義は以下の通りです。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
我々の生活の中にはDXによってもたらされた、さまざまなサービスやプロダクトがあります。例えば、AppleはiPhoneをリリースしてスマートフォンという先進的なプロダクトによって、我々の生活をとても便利にしました。
また、Uberは従来、所有することが原則とされていた自動車を、皆で共有するシェアリングエコノミーというビジネスモデルを確立し、新たな市場や雇用を生み出しています。さらに、Uberはシェアリングエコノミーのビジネスモデルを飲食業界へ応用することで、UberEatsという新たなサービスも立ち上げました。
これらの企業が世界の市場を席巻していることは、もはや説明不要だと思います。そして、このような大きな功績を達成できたのは、DXを実現できていたからこそなのでしょう。
企業がDXに取り組む必要性
日本企業の多くは、2020年の新型コロナウイルスで多くのダメージを受けました。市場の先が見えづらくなったことで、日本企業は柔軟でスピーディーな対応が求められる状況です。
一方、度重なる自然災害によって、甚大な被害を受けた企業もかなりの数に上ります。そのため、有事の際に事業を継続、復旧させるBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の重要度が増しており、その対策に取り組む企業も増加傾向です。
さらに、グローバルな視点で見ると、日本のGDPは欧米が増加傾向であることに対し、横ばい状態が続いています。昭和のバブル経済以前のように、日本企業が世界を席巻していた時代はとうの昔に終わっており、現在はGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)をはじめとする欧米のIT企業が最盛期を迎えている状況です。
したがって、日本企業は業務効率化や生産性向上によって、市場における競争力を高め収益増加を達成しなくては、これ以上GDPを上げることは難しいでしょう。そして、それを実現するためには日本企業におけるDXの実現が必要不可欠といえます。
また、次章で説明するレガシーシステムからの脱却も、日本企業がDXを推進しなくてはいけない大きな理由のひとつです。
なぜ日本企業のDXは遅れている?
日本企業は欧米の企業に比べてDX推進が遅れているといわれています。
その理由として考えられるものが、
・日本企業に残るレガシーシステム
・DXを推進するためのIT人材不足
という2つの課題です。
レガシーシステムとは日本企業によくみられる、肥大化、複雑化した既存のシステムで、属人化やブラックボックス化が起こりやすく、かつ最新のITツールやテクノロジーとの連動が困難なシステムの総称です。レガシーシステムに依存している企業は、市場に適応するために業務改善をおこなおうとしても、影響範囲の広さや導入までの工数が非常に高く、柔軟な対応がおこなえません。
この状況に対して、経済産業省は「2025年の壁」と呼ばれる提言によって、日本企業に対して警鐘を鳴らしています。「2025年の壁」とは、日本企業がレガシーシステムの課題を解決できなかった場合、今後2025年以降で最大12兆円の経済損失のリスクがあるという提言です。
一方、DXを推進するためにはエンジニアやプログラマーなどのIT人材が必要不可欠といえます。しかしながら、少子高齢化によって労働人口が減少する中、さらに希少価値の高いIT人材を確保することは、多くの企業にとって非常に難しい状況です。また、IT人材が売り手市場になっていることもあり、大企業などに集中している点も大きな問題といえるでしょう。そのため、すべての日本企業において、IT人材の確保と育成が課題となっています。
これら2つの課題が慢性的に蔓延っているため、日本企業におけるDX推進が現状なかなか進まないのです。
DXの取り組みで経営層が果たすべき役割とは?
DX推進における経営層の役割は、ずばりDX推進の引率者にほかなりません。経営層自らが「絶対にDXを実現する」という強い意志をもってアクションを起こさなければ、全社的な推進の実現は失敗に終わるでしょう。
では、具体的にどのようなアクションを起こすべきなのか解説します。
経営層が明確なビジョンを提示する
DX推進をする際にありがちなパターンが、経営層が情報システム部門などに丸投げにするケースです。しかし、この方法ではDXを実現できる可能性は極めて低いでしょう。経営層自らが、DXを実現するという強い意志を全社員に向けて示す必要があるのです。
まず、何を達成するためにDXを推進するのか、経営層のリーダーシップのもと、明確なビジョンを示す必要があります。その際、何をいつまでにどのような状態にしたいのか、できる限り具体的に示すことが重要です。
また、ビジョンによって示した内容は、経営戦略や従業員の目標設定などに反映できるようにしておかなくては意味がありません。DXを全社で推進するという強い意志を示し、目標として理解させ、アクションへとつなげていく仕組みが必要です。
経営層がDXに本気でコミットする
経営層自身が危機感をもって会社を変革するというビジョンを示した後は、具体的なヒト、モノ、カネのリソース配分をDX推進に注ぎ込むことをコミットしましょう。「DXを全社的に推進するぞ!」と言っておきながら、予算も人も投資しないのであれば、それは本気の取り組みとはいえません。
また、DXを実現するためには3年~5年程度の期間が必要です。よって、中長期的な予算を確保しなくてはいけないため、事業計画の調整も必要です。
適切なKPI(重要業績評価指標)の設定
DX実現によって達成したい目標を部門単位にブレークダウンして、具体的なKPIを設定しましょう。このとき注意しなくてはいけないポイントが、あまりにも実現性に乏しいKPIを設定しないことです。
DX推進をはじめ、ITツールなどを導入しても、すぐに高い効果が期待できるわけではありません。DXを実現するためには年単位の期間が必要になります。そのため、KPIの進捗を定期的にウォッチしながら、適宜数値を調整することも必要です。
DX実現に向けた組織の編成
全社的にDXを推進する際には、専任でDXのプロジェクトをけん引する組織を作ることが必須です。DXを実現するためには、さまざまなITツールやテクノロジーの導入はもちろん、全社的な課題を洗い出しその解決策を検討して実施することが求められます。
したがって、各部署のDX担当者だけでは、全体を俯瞰することが困難なため、専任の組織を作って全社横断的なプロジェクトとして推進していかなくてはなりません。
現場がDXに取り組める環境の構築
各部署にRPAなどのITツール導入を促すために予算を配分したり、DX推進自体を公な業務として取り組んでもらうために目標設定の項目に組み込むように指示したりすることも、経営層の重要な役割です。
現場のスタッフがDXを自分事として取り組めるような仕組み作りは、DX実現のために必要不可欠な要素といえるでしょう。
DX人材の獲得と育成
DXを推進するためには、プログラマーやエンジニアなどのIT人材の存在が欠かせません。そのため、IT人材の確保に予算を投入することはもちろん、社内にIT人材を育成する環境を作ることも経営層の重要なミッションです。
IT人材の確保は市場環境的に容易ではないため、社内人材の育成には特に注力するべきでしょう。外部のリソースなども活用して、早急に取り組む必要があります。
DXの取り組みにおける現場の役割
先ほど、DX推進をするためにはIT人材が必要不可欠とお伝えしましたが、なかなか難しい課題ともいえるため、採用や育成活動がうまくいかないケースもあるでしょう。そのため、日本企業がDXを推進する際には、IT人材だけに頼らない日本型DXを推進するべきです。
つまり、IT人材だけに依存せず、現場のスタッフがITスキルを活用し、生産性向上を実現することが求められます。例えば、RPAなど現場スタッフでも比較的扱いやすいITツールの導入を励行することが近道といえるでしょう。
RPAとは人がパソコンでおこなっている定型作業をソフトウェアロボットに覚えさせることで、自動化を実現するITツールです。RPAを導入すれば現場スタッフ自らが業務改善を実施できるため、現場マターでDX推進を実現できます。
その際にも、ベンダー企業のサポートを積極的に利用するなど、IT人材依存しない体制づくりができるかがカギになります。
こうした日本型DXを実現できるための環境を構築することも、経営層の重要な役割です。
DX推進の成功事例
実際にDXを実現し、高い成果を上げた企業の事例を2つ紹介します。
株式会社たき新
ギフト商品の販売を展開する株式会社たき新は、ITツールの導入によってDXを実現したことで、生産性と収益の大幅な改善に成功しました。
以前はアナログな作業で商品の受発注管理をおこなっており、スタッフの勘に頼っていた部分も多かったそうです。そのため、在庫数と商品の回転率が低い水準だったことが課題となっていました。
そこで同社では、商品管理をデジタル化し受発注の状況をシステムで一元管理できるように改革をおこない、在庫数を以前の1/10まで下げ、回転率は60倍にまでアップすることに成功。また、ECサイトも立ち上げ、そちらもシステムで一元管理したことでスタッフの工数を大幅に下げただけでなく、以前に比べ2.6倍の売り上げを達成することができたそうです。
スタッフの業務負荷が下がった同社では、事業戦略に多くの時間を割けるようになったことから、さらなる生産性の向上を目指せる企業へと変革しました。
みずほ銀行
みずほ銀行もDX推進に取り組んでいます。その一例がスマートビジネスローンです。
以前は中小企業へ融資をおこなう際、経営者自らが銀行の支店に赴き、たくさんの書類を提出する必要がありました。そのため、融資までに多くの時間がかかることが課題となっていることから、スマートビジネスローンの検討がはじまったそうです。
同社ではAIを活用し、顧客企業の信用調査のスピードを飛躍的に向上することに成功しました。これにより経営者は、WEBサイトで10分程度の登録作業をおこなうだけで審査を完了できるようになり、最短2営業日で融資を受けることが可能になったのです。
多くの書類を準備する必要がなくなったことや、実際に店舗に赴く必要がなくなったため、顧客に寄り添ったサービスの提供が実現されました。その結果、過去にはあまり融資を実施したことがなかった、ベンチャーやスタートアップ企業との取引も可能になり、市場が拡大する可能性も生まれたのです。
経営層が本気にならなければDXの実現は困難
DXを実現するための、経営層の役割は非常に多岐にわたることが分かってもらえたかと思います。
経営層自らが本気になって、率先してアクションを起こさなければ、全社的なDX推進が困難なだけでなく、生産性や収益を向上させることも難しいでしょう。
経営層の皆様のリーダーシップで貴社のDX推進を実現してください。
なお、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のエントリーツールとして多くの企業で活用されているのが、上述したRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。
DX推進を具体的に進めたいと考えている際は、ぜひはじめの一歩としてRPAを検討されることをおすすめします。
なかでも、RPA「ロボパット DX」は、プログラミング知識のない現場が自分で作業を自動化できるように開発されたツールです。
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