業務を自動化するメリットとは?
業務を自動化するといわれても具体的にどのようなメリットがあるのか分からなければ、積極的に導入を進めることはできないでしょう。まずは業務を自動化するおもなメリットを紹介します。
業務の手間が削減できる
業務を自動化できれば、そこに携わっていたスタッフの業務負荷と工数の削減につながります。
1回あたり3分かかる作業を1日10回実施している場合には、単純計算で30分の工数が削減されますが、月単位(5日×4週=20日)で見れば600分(10時間)もの工数になるため、ほぼ1日分の工数削減効果が期待できるのです。
同様の作業が複数ある場合には、さらに大きな工数削減が見込まれるため、残業や人件費といったコスト削減にもつながる可能性があります。
人為的なミスが減る
業務を自動化する場合には、ITツールなどを活用して人間の手作業を代替させ、あらかじめ指示した処理を実行させることになります。つまり、同じ作業を正確に行えるため、人手による作業で発生しがちな人為的なミスの抑制にもつながります。
特に経理や人事部門などでは、売り上げに関する数字や給与などを扱う性質上、ミスが許されない風土があり、業務に携わるスタッフにかかるプレッシャーは相当なものだと推察されます。
業務を自動化できれば、スタッフはそのストレスから解放されますので、ライフワークバランスの維持やエンゲージメント強化につながる効果が期待できるでしょう。
人手不足などボトルネックの解消
業務を自動化することで、人手不足の解消にもつながります。
周知の通り、日本は少子高齢化の影響で労働人口が年々減少傾向にあります。一方、政府は日本企業の多くが依存している大規模で複雑化したレガシーシステムから脱却できなかった場合、2025年以降に最大で12兆円の経済損失を被る可能性があるという「2025年の崖」と呼ばれる提言を出しています。その解決策のひとつとして、政府は日本企業に働き方改革やDX推進を励行している状況です。
つまり、日本企業における人手不足は慢性的な課題といえます。PCで行う定型作業に大切なスタッフを割いている場合ではなく、業務の自動化によって人手不足を解消する必要があるのです。
空いた時間を有効に使える
業務を自動化してスタッフの工数削減をおこなうと「自分の仕事がなくなるのでは?」と考える人も少なからずいると思います。
しかし実際は、自動化によって空いたスタッフを、人の柔軟な判断や感性が必要なクリエイティブな業務や企業のコア業務へ割り当てることで、生産性をより高めることが、業務を自動化する最大の目的です。
ロボットやAI(人工知能)、ITツールでも実施できる業務は積極的に自動化して、人がより重要な業務を実施できるようにすることで、時間を有効活用することが重要なポイントだといえます。朝から晩まで単純なデータ入力業務や集計業務に時間を費やすよりも、クリエイティブな業務に就いたほうが、スタッフもやりがいを持って仕事に取り組めるようになるでしょう。
業務の自動化に役立つ「RPA」とは?
RPAとは「Robotic Process Automation」の略語で、人がPCで行っている定型業務を、ソフトウェアロボットに操作方法を覚えさせることで自動化を実現するITツールです。RPAを活用することで、人がPC上で行う多くの業務を自動化することができますので、前述した自動化によるメリットが得られます。
RPAは、スタッフのPCにインストールして使うデスクトップ型をはじめ、インストール不要でブラウザ上で利用できるクラウド型も一般的です。また、自社サーバーによる開発環境を構築するサーバー型のRPAも提供されており、全社横断的な大規模な業務や大量のデータ処理が必要な業務の自動化を実現する際に活用されています。
デスクトップ型やクラウド型のRPAツールは比較的安価で、かつ導入までのリードタイムが短くすぐに設定・利用ができるため、近年多くの企業で導入が進んでいます。
RPA導入における注意点
業務の自動化に最適なITツールであるRPAですが、万能な自動化ツールではありません。有効活用するためには、以下のポイントをチェックする必要があります。
RPAの自動化は適した業務・向いていない業務がある
RPAで自動化が行える業務は、以下のような性質の業務です。
- PC上で実施する業務である
- 作業内容が定型化しており、毎回同じ方法で実施される
- 人の感性や判断が必要ない
つまり、PCをまったく使わないアナログな業務や、毎回やりかたが変わる業務、人の感性が必要な非定型業務は、RPAで自動化することは基本的にできません。
よって、RPAを活用して業務を自動化する場合には、事前に社内の業務の棚卸や業務フローの可視化を実施して、人が行うべき業務とRPAで自動化する業務を選別しておく必要があります。
野良ロボットの発生に注意
デスクトップ型やクラウド型のRPAツールを導入した場合、業務の自動化を行うロボの作成や管理を現場のスタッフ単位で行うことができます。現場のスタッフがRPAを使いこなし、自走的に業務の自動化を進められる点は大きなメリットではありますが、その一方でスタッフのPCのみで管理される野良ロボットが増える点はデメリットだといえるでしょう。
野良ロボットが社内に横行すると一元管理が難しくなり、一部のスタッフだけに技術やノウハウが集中し業務が属人化する可能性が高くなります。また、該当スタッフが退社や転勤した場合、ロボのクオリティ管理やトラブル発生時のメンテナンスなどを、第三者が実施できなくなる点も大きな問題です。
したがってRPAを導入する際には、社内のRPAで開発したロボを管理する体制を構築する必要があります。
RPAを活用するための人材・組織が必要
RPAはプログラマーやエンジニアではない非IT人材でも比較的利用しやすいアプリケーションです。しかしながら、まったく知識やスキルが不要なわけではないため、RPAを活用するための人材を育成する体制の構築が必須となります。特に現場のスタッフ主導で業務効率化プロジェクトを実施したい場合には、RPAのスキルアップが行える教育体制を構築するべきでしょう。
また、全社的にRPAを活用していく場合には、社内に浸透させるための人員が必要です。部署を横断してRPAの活用や周知を担う組織を作り、活用の幅を広げていきましょう。
RPAとマクロの違いとは?
自動化といえば「マクロ」と呼ばれる機能をご存知の方も多いかもしれません。マクロとRPAはどのように違うのでしょうか。
それぞれの違いを理解して、有効活用しましょう。
マクロとVBA
マクロとはExcelなどのソフトで実施する処理を自動化するための機能です。Excel以外にもOutlookやWord、PowerPointなどのMicrosoft Officeソフトで実施する作業を自動化できます。
このとき、自動化する処理の内容をプログラミング言語化して記録したものがマクロです。このプログラミング言語がVBA(Visual Basic for Applications)と呼ばれるMicrosoft Officeソフトの拡張機能になります。つまり、VBAとはマクロを構成するためのプログラミング言語といえます。
RPAとマクロの違い
RPAとマクロの違いを自動化できる業務、現場での扱いやすさ、処理できるデータ量の3つの視点で比較してみましょう。
自動化できる業務の違い
マクロとRPAでは自動化できる業務に大きな違いがあります。
マクロで自動化できる業務は、基本的にMicrosoft Officeソフトやファイル内の処理に限定されている点が特徴です。例えば、Excelに入力したデータを集計してグラフ化する作業を自動化するといった処理であれば、マクロで自動化することができます。また、マクロはプログラミング言語であるVBAを使うことから、自動化の処理を行う最中に別ファイルを参照してデータを抽出するといったことも可能です。
一方、RPAはMicrosoft OfficeソフトやGoogle Chromeなどのブラウザ、各種Webアプリやシステム、データベース、そして自社開発のソフトやアプリで行われる処理の自動化に対応しています。また、社内システムのデータをダウンロードしてExcelへ転記して集計する作業の自動化に対応しているなど、Microsoft Officeソフト間に留まらず、さまざまなソフトやアプリ、システムと連携した業務の自動化が実現できる点が特長です。
つまり、それぞれが自動化対象の業務範囲は、
- マクロ:Microsoft Officeソフトの操作に限定される
- RPA:パソコン上で実施されるほぼすべての操作
となります。最近はクラウドベースのWebアプリなども増えているため、マクロだけで自動化できない業務が増えています。
現場での扱いやすさ
マクロやRPAを利用する際、スタッフに必要とされるスキルもそれぞれ異なります。
まず、マクロは前述した通りプログラミング言語であるため、最低限のプログラミングスキルがなければ使いこなすことは難しいでしょう。一方、RPAはドラッグ&ドロップなどの操作で直感的に手順を自動的に設定できるツールも多く、プログラミングや高いITスキルを持たない現場のスタッフでも十分に使いこなすことが可能です。
さらに、RPAは集計やデータ入力など、一般的な作業を自動化するテンプレートやサンプルも提供されていることが多い、それらを活用することでより簡単に業務の自動化が実現できます。したがって、RPAであれば情報システム部門がない企業や、IT人材が少ない企業においても、現場主導で業務効率化の検討が進めやすいでしょう。
ただしRPAを使用する際にも、最低限のツールを操作するスキルは必要になるため、ベンダーなどのサポートを有効活用してスタッフのスキル向上への取り組みが必要です。
処理できるデータ量
複数の部門をまたぐ業務の自動化を実施する場合には、大量のデータを取得し捌く必要があります。マクロはあくまでもパソコン上で動作する機能のため、処理できるデータ量はパソコンのスペックによります。大量のデータを処理する際には動作が重くなったり動かなくなったりする可能性があるでしょう。
一方、RPAはサーバー型と呼ばれる、自社で構築したサーバー内に開発環境を置くタイプのものもあり、大規模な業務の自動化をストレスなく実現できます。大量のデータでもスピーディーに処理できるでしょう。
したがって、全社を横断するような大規模な業務の自動化などを実施する場合には、マクロではなくRPAを活用したほうが無難です。
RPAの導入前に押さえておくべきこととは?
RPAを導入する前には以下3つのポイントを押さえて、最適なRPAツールを選択しましょう。
自動化したい業務を明確にしておく
RPAを導入する際には、どのような目的を達成したいのか、できるだけ具体的に決めておきましょう。また、その目的を実現するために、どの業務を自動化する必要があるのか可視化しておくことも重要なポイントです。
前述した通り、RPAには自動化に適した業務とそうでない業務があります。そのため、そもそもRPAで自動化できない業務が多い企業の場合、導入後に高い効果は得られません。
また、自動化を実現するために必要な機能がついたRPAツールであることも必須です。事前にベンダーに問い合わせをして、該当業務に関する自動化の実現性について確認しておきましょう。
誰がRPAを使用するのかを明確にする
RPAツールを導入後、実際に誰が活用するのかによっても、どのRPAツールを選択するべきかが変わってきます。つまり、プログラミングやITスキルを持つ情報システム部門のスタッフと、経理や人事、営業部門などの非IT人材スタッフのどちらが使うかによって、選択するべきRPAツールを変える必要があるのです。
例えば、現場のスタッフが主導で業務の自動化を推進したい場合は、平易なUI・UXを搭載した非IT人材でも扱えるRPAツールを選ばなくてはいけません。一方、情報システム部門のスタッフが主導で業務自動化を推進する場合には、サーバー型RPAなどの高いITスキルが必要なものでも問題ないでしょう。
導入前に誰がRPAを使用するのか明確にしておくことがマストです。
ベンダーによるサポートやトライアルの体制を確認しておく
RPAの導入時や実際の運用がスタートした後、ベンダーのサポートがどの程度受けられるのかについても、RPAツールを選択する際の重要なポイントです。これまでRPAを未導入だった企業や、IT人材が少ない企業の場合は、手厚いサポート体制のベンダーと契約することをおすすめします。
また、自社に合いそうなRPAツールが絞り込めた際には、無料トライアルの有無についても確認しておきましょう。RPAツールを導入してみたものの「自社には合わなかった」「思ったような効果が上がらなかった」という問題が発覚することがあります。導入前に無料トライアルを活用して、実際にRPAツールを使ってみることで、こうした問題を未然に防ぐことができるでしょう。多くのベンダーが無料トライアル期間を提供しているので、積極的に活用することをおすすめします。
PC業務を自動化してコア業務に集中するべき
労働人口が減少傾向の現在、リソースの重要度は以前に比べ高まっています。そのため、PCで行う定型業務はどんどん自動化して、本来人が行うべきコア業務に集中できる時間を捻出することが必要不可欠です。
そのためにも、積極的にRPAやマクロを活用し、業務効率化を進め理想的な労働環境を実現してください。