業務効率化とは
業務効率化とは、業務のプロセスでムリ、ムダ、ムラがある箇所を見つけて省くことで非効率な部分をなくすことです。「業務効率化」は、政府による働き方改革が推進されている状況でもよく聞かれるキーワードですが、さまざまな方法があります。具体的な方法はのちほど詳しくご説明します。
なお、業務効率化と混同しやすい用語に「生産性向上」があります。生産性向上はできるだけ少ないリソース(資源)で成果を得ることです。つまり、業務効率化によってインプットの最小化を図ることが生産性の向上(アウトプットの最大化)につながる、という関係性となります。
業務効率化のメリット
業務効率化のメリットはさまざまですが、主な内容として3つご説明します。
業務時間の短縮
業務効率化が実現することで業務時間の短縮が可能になります。例えば、バックオフィスでこれまで請求書や領収書などを手動でエクセルのフォーマットに入力していたとしましょう。それらの作業は単純な内容であり、定型的にこなすものです。作業内容は難しくないとしても、処理する量が増えればデータ入力やチェックの時間も増加してきます。
そこで、何かしらの方法によって業務効率化を行うと、業務時間の短縮につながります。業務時間が短縮すると社員にとって働きやすい職場になるほか、企業としても残業などが減ることで人件費の削減に効果があります。業務時間の短縮が企業にもたらす効果は非常に大きいといえます。
従業員のモチベーションアップ
業務時間が短縮することで従業員が長時間労働から解放されると、働きやすい環境となり、モチベーション向上につながるでしょう。
モチベーションが上がると、質の高い仕事ができるようになり、従業員の会社に対する満足度や定着率の向上などのメリットも生まれます。
生産性の向上による利益の増加
業務効率化は企業の生産性の向上につながり、従業員のアウトプットの質も向上していきます。また、従業員が生産性を高めて質のいいアウトプットができると、企業の利益の増加にも貢献します。
企業の利益が増加すれば、新規事業への投資も可能となりますが、労働時間の短縮が図れたときも、そのような新規事業に対して適切なリソース配分の見直しができます。これまで必要なリソースが確保できなかった部分に時間や資金を投入することができれば、さらなる成長サイクルが生み出せるでしょう。
業務効率化を進める手順
業務効率化を進める際は、以下の流れで取り組んでいくとよいでしょう。各ステップについて解説します。
現状の業務の内容を把握する
事務業務の効率化を実施する際には、事前に業務の棚卸を行って現状の業務内容を理解し、把握しておく必要があります。
業務内容や業務フロー、担当者や関連部門、必要工数、発生頻度などの項目をあらかじめ決めて整理しておきましょう。特に担当者が一人、もしくは数人で行っているなど、属人化した業務は見える化することで、最適な手段ややり方を発見できる可能性がありますので、時間をかけてでも全容を明らかにしておくと今後の改善の取り組みに役立つでしょう。
このように現状を把握することで、次のステップである課題点の発見につながります。
現状の業務の課題点を見つける
業務の棚卸を実施する際、作業内容や業務フローの課題点や注意点も見つけておきましょう。課題点の洗い出しの手間を惜しむと、改善案がぼやけたものになり、業務効率化に取り組んでも期待した効果が見込めません。
例えば、無駄な作業や非効率な作業などをピックアップして、どこがボトルネックになっているのかを明確化しておくことが重要です。よく「ムリ・ムダ・ムラ」といわれますが、能力を上回った状況であるムリ、ムリとムダが混在しているムラ、などがどこで発生しているかも明らかにする必要があります。
業務フローを可能な限り可視化して、ボトルネックとなっている部分を洗い出しましょう。
課題点の改善策を立てる
現状の業務の課題点が明確化できたら、次は具体的な業務改善策を検討します。
例えば、
- 業務の優先順位決め(残す業務となくす業務の絞り込み)
- ITツールによる業務の自動化
- 業務フローの改善
- 業務マニュアルの整備
- 担当者・担当部門の変更
など、さまざまなアイデアを出して、複合的に検討していきましょう。また、全体で実行する施策内容が決まったら、優先度に応じた具体的なスケジュールの調整も必要です。
改善策を考えるときのポイントは、単純作業、発生頻度が高い業務、マニュアル化しやすい業務に着目するといいでしょう。必ずしも人的リソースを必要としないものであれば、ツールに頼る方法も積極的に検討しましょう。
また、改善策を検討するときは、排除・結合・交換・簡略化をキーワードにすることも有効です。不要な業務の削減、関係性の高い業務の連携、ツールや外注などへの置き換え、業務フローの簡素化などの視点を持つと改善策が定まるでしょう。
改善策を実践し効果を検証する
改善策を検討したら実践して効果を検証しましょう。スケジュールに沿って仮説通りに効果がでるのかどうかを判断します。上手くいかない場合は、問題点をさらに改善して効果検証を行います。
PDCAサイクルを回して業務の効率化を目指しましょう。
業務効率化を図る具体的な6つのアイデア
ここからは業務効率化を図る具体的なアイデアをご紹介します。主なアイデアとして6つの内容をご説明します。
1,データや物品の整理整頓を行う
整理整頓は業務効率化の基本です。データや物品の格納場所がバラバラな場合、スタッフが検索に使う時間と労力がムダに多く発生します。
業務効率化を行ううえで、作業時間の短縮化は非常に重要なポイントになるため、必要な資料のデータや物品の検索にかかる時間は最小限に減らすことが必須です。
ワークフローや作業内容などを確認し、スタッフがもっとも効率よくデータや物品を利用できる環境を整えることが、業務効率化実現の第一歩といえるでしょう。
データに関してはデータベースを活用する方法があります。データベースとは、会社で使われてきた情報を蓄積したシステムです。業務や顧客など社内のあらゆる情報をデジタル化し、データベースで整理することで、効率よく業務への活用ができるでしょう。
2,定型作業の自動化
定型作業はRPAなどのツールを活用して自動化することをおすすめします。例えば、取引先からメールで届く発注書の数値や社内で上がってくるExcelの数値を集計し、結果を社内システムへ入力する作業が1日に10回発生するなどといった場合は、自動化しましょう。
作業時間に着目すると、1回5分の作業を1日10回行う場合は、自動化できれば1日に50分の工数削減につながり、1週間(5営業日)では250分、1ヶ月(20営業日)では1,000分といった大きな効果が見込めるでしょう。
同様の作業が複数ある場合はさらに大きな効率化につながるため、空いた時間をコア業務に充てることで生産性が上がる確率が高まります。
3,PCのショートカットやExcelの機能を活用
PCで作業をする際「Ctrl + C」や「Ctrl + V」などのショートカットをよく使うと思いますが、それ以外にも便利なショートカットがたくさん存在します。それらを有効活用することで工数削減につなげることが可能です。
また、業務でExcelを使用するケースも多いと思いますが、Excelの機能や関数、マクロを使用することで少しでも入力作業を楽にすることができないか、検討することが大切です。特にPCで行う定型作業が多い事務処理においては、大きな工数削減効果を発揮するでしょう。
効果が高そうなショートカットキーやよく活用されるExcel関数の一覧表を作成して、スタッフに配布して利用を促進するだけで工数の削減が期待できます。
4,業務マニュアルを作成する
業務マニュアルの作成と定期的な内容の更新も、事務作業の業務効率化には必要不可欠です。
業務内容がスタッフ間の口頭伝承になっている現場では、正しい作業方法が伝わらず非効率になっているケースが散見します。スタッフによって作業方法が違ったり、最悪の場合、間違った工程で作業が行われたりするケースもあり、生産性が低下する原因になりうるでしょう。
業務マニュアルを作成することで、特に複数名で行うような業務の品質向上やスピード向上につながります。作業を行うスタッフがすぐに参照できるように、クラウドストレージや掲示板なども活用すると効果的でしょう。
なお、業務マニュアルは従業員が読みやすく分かりやすい内容で作成してください。専門用語を多く使ったり文章のみにしたりすると、従業員が理解しにくくなります。意味を噛み砕いた表現にして、図や表を入れることで分かりやすいマニュアルになるでしょう。
5,PCの処理能力を上げる
古いPCを長期間使っている場合は、処理能力の高いPCに乗り換えるだけで業務効率化につながります。処理能力が低いPCを使っていると、何をするにも長い待ち時間が発生し、その間スタッフは何も作業ができなくなり非常に非効率です。
しかし、処理能力が早く、サクサク作業ができるPCに乗り換えることで、作業効率が上がり従来よりも多くの作業をこなせるようになるでしょう。
PCの導入にはコストが発生しますが、長期的な業務効率化の効果と比較すれば、費用対効果も高くなります。導入判断もしやすくなるため、まずは費用対効果の試算をおすすめします。
6,アウトソーシングを活用する
事務作業の中には単純作業も多いため、アウトソーシングサービスの活用も視野に入れましょう。
スタッフをコア業務にアサインさせたくても、やらなくてはいけない作業が山積みの場合、実現するのは困難でしょう。そこで、単純な事務作業は外注し、スタッフがコア業務に集中できる時間を捻出する方法が有効です。
業務の棚卸の際に作業の優先順位を可視化しておけば、アウトソーシング化できる業務の選別もしやすいでしょう。
業務効率化のアイデアを成功させるには
前章でご紹介した業務効率化のアイデアを成功させるには、以下のポイントを理解しておきましょう。
業務効率化を実現したい箇所を明確にする
社内における全ての業務を効率化するのは難しいものです。まずは効率化したい項目を洗い出して、その目的を明確にしましょう。「業務の品質を均一にしたい」などの理想も定めておくべきです。
マニュアルによって業務品質を均一にする
マニュアルは従業員の業務品質を均一にするツールです。企業で働く際の心構え、仕事上のルールなども記載しておくと、業務へのモチベーションを保ちながら効率化に取り組めるでしょう。
資料の規格を統一する
マニュアルも含めて業務に関する資料は定期的に更新するものです。しかし、マニュアルや資料によって規格が変わると理解しにくくなります。フォーマットやデザイン、書式、フォントなど細かな部分を統一して作成することで分かりやすい資料になります。
業務への極端なこだわりを持たない
業務効率化や質にこだわることは大切なことですが、あまりにもこだわりが強いと逆効果になることがあります。完璧な仕事をするという意識よりも、目的をどうやって効率よく達成するかを考えましょう。
従業員の適正を見極める
従業員には得意不得意があります。不得意な分野に配置されると、業務効率が悪くなるものです。業務効率化を実現するには、従業員の適正を見極めて適材適所で人員を配置することが大事です。
ミスをフィードバックして活用する
仕事を進めるうえでミスはつきものです。大事なのはミスが起こったときに、どのように処理するかです。ミスを上司に報告できる環境を構築して、フィードバックとして活かすことがポイントになります。
いきなり全てのアイデアを実行しない
業務効率化に向けて多くのアイデアを検討すると思います。しかし、いきなり全てのアイデアを実行すると、キャパシティが追いつかないことがあり、逆効果になることも考えられます。
まずは1つずつアイデアを実行していき、効果を得てから次のアイデアに取り組んでください。
業務効率化に役立つツール
事務作業の効率化を成功させるには、ITツールの活用がおすすめです。ここではおすすめのITツールをご紹介します。
RPA
RPAは従業員がパソコンで行う定型的な事務作業を、ソフトウェアロボットに覚えさせることで自動化できるITツールです。繰り返し行う事務作業を自動化できれば、大幅な工数削減効果が期待できるでしょう。
RPAは製品によっては、IT知識やプログラミングスキルがないスタッフでも簡単に扱いやすく、現場主導で業務効率化が進められる点がメリットです。
タスク管理ツール
業務の棚卸や優先順位の決定、実施スケジュールを一元管理できるタスク管理ツールの活用も、業務効率化には欠かせません。業務の進捗状況が可視化できるため、スタッフ間での情報共有が容易になり、フォローアップもしやすくなります。
また、改善策の実施とPDCAサイクルの検証を実施するうえでも必要不可欠なITツールです。最近では後述するビジネスチャットにタスク管理機能がついているツールもあります。
ビジネスチャット
ビジネスチャットはスタッフ間の効率的なコミュニケーションを実現するITツールです。最近では、顧客など社外とのやりとりで使われることも増えてきています。
メールや電話のような1対1のコミュニケーションではなく、タスクやプロジェクトごとにアサインされた複数メンバー間でのコミュニケーションが可能になります。メールのように複数のメッセージの中に重要な情報が埋もれることが少なく、即時的にアクションが取りやすくなり業務効率化につながりやすくなるでしょう。
また、テレワークやリモートワークを導入している企業においても、業務をスムーズに進められる点がメリットです。ビデオ会議や音声通話に対応しているツールもあるため、機能を比較して選んでください。
オンラインストレージ
チャットツールを導入する際は、スタッフ間でファイルの共有や編集が可能になるオンラインストレージの導入も同時に進めたいところです。こちらもテレワークを行う企業には不可欠なITツールといえるでしょう。
自社で共有サーバーを準備すると、導入およびランニングコストが肥大化する傾向があります。しかし、オンラインストレージであれば必要に応じて容量を追加・削除できるため安価に運用でき、導入までのリードタイムも短いため非常に便利です。
電子承認ツール
電子承認ツールとは、紙や印鑑を使って行っていた稟議・承認フローをWEB上で実施できるようにするITツールです。業務の電子化・ペーパーレス化が実現し印刷の手間もなくなることで、承認スピードの高速化や書類の管理コスト削減といった効果が期待できるでしょう。
「〇〇さんの印鑑が必要だけど、出張でいない」といった状況でも、WEB上で承認がもらえるようになるため業務がスムーズに進みます。また、電子契約や電子押印などのITツールを活用することで、取引先との契約書締結作業をWEB上で完結させることも可能です。
まとめ
業務効率化は、現在の業務内容やフローを可視化して棚卸を行い、課題点を明確化した後、
- データや物品の整理整頓を行う
- 高頻度の作業の自動化
- PCのショートカットを活用
- 業務のマニュアルを作成する
- PCの処理能力を上げる
- アウトソーシングを活用する
といった改善策やITツールの活用によって、業務効率化が進められるため、できるところから試してみましょう。
なお、事務作業の効率化を行う際には、RPAの活用がおすすめです。RPAで事務作業を自動化して、人材のリソースを確保できれば、その他の改善策も実施しやすくなるでしょう。
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