中小企業における業務効率化
業務を効率化して生産性を上げていくことは、企業が成長し続けていくために重要な取り組みです。特に中小企業では、早いうちから業務効率化に向けて動いていく必要があります。
ここでは、中小企業が業務効率化を図るべき理由や、メリット、具体的な方法について紹介します。
中小企業こそ業務効率化すべき理由
中小企業は大手企業に比べて業務効率化を進めやすいとされています。その主な理由は以下の3つです。
- 企業規模が小さいため全社で情報共有しやすい
- 意思決定にかかる時間が短い
- 中小企業向けの助成金が用意されている
大企業では従業員の数が多いことで情報共有に時間がかかってしまいますが、中小企業は従業員数が少なく、情報共有がスピーディーにおこなえ、結果的に業務改善がスムーズに進むと考えられます。
また、中小企業は組織編成がシンプルで経営層や管理職層が多くないため、経営を主導する社長が意思決定をおこなえばすぐに業務効率化に取り組むことが可能です。
そして、業務改善のための資金が足りないという中小企業は、中小企業や小規模事業者を対象とした助成金を利用しましょう。
日本の企業は99%が中小企業であり、大企業に比べて従業員数が少なく1人あたりの負担が大きくなり、労働生産性が低い傾向にあります。目先の業務を優先し、業務効率化を後回しにしがちな中小企業ですが、一方で大手企業に比べて業務効率化に取り組みやすい側面もあることを理解しておきましょう。
中小企業が業務効率化を進めるメリット
中小企業が業務効率化を進めることで得られる恩恵は、主に以下の5つです。
- 労働生産性の向上につながる
- 企業の利益を拡大できる
- 時間コスト・物理的コストの削減につながる
- 従業員の満足度向上につながる
- 採用力のアップにつながる
業務効率化を進めることで、従業員は単純な処理作業をおこなう手間が省け、時間コストを削減できます。従業員を増やさずに処理できる業務量が増えるため、労働生産性の向上につながるでしょう。
また、デジタル技術を利用したシステムやツールを活用すればペーパーレスを推進できるため、物理的コストの削減も可能です。
業務が効率化されることで、従業員はコア業務に集中して取り組めるようになり、業務に対してのモチベーションや満足度のアップにもつながるでしょう。そしてこれらのメリットが、企業全体の利益アップにも貢献します。
このように、業務効率化は中小企業にとってメリットが多くあるため、積極的に推進していきましょう。
中小企業が業務効率化のためにすべきこと
中小企業が業務効率化を進めるために意識するポイントは以下の6つです。
- すべての業務を可視化する
- 現在の業務内容の課題を抽出する
- 業務を効率化する目的を明確にする
- 効率化したい業務の優先順位をつける
- 業務効率化を進めるための体制を整備する
- マニュアルを作成して属人化を防ぐ
効率化を図るべき業務を見つけるためにも、まずは業務全体の可視化をおこないましょう。これは現状把握のためにも欠かせない作業です。業務の担当部署や担当者、作業工数、作業時間、発生頻度、必要なスキルなどを洗い出し、整理しておきます。
課題の発見や、効率化の目的を明確にするためにも、従業員へのヒアリングは時間をかけておこなうとよいでしょう。
業務効率化は会社全体で一気に進めることはできません。業務の進め方が変わるため、従業員も新しい体制に慣れるまで時間がかかります。すべての業務で推し進めてしまうと、トラブルや混乱を招く危険があるため、小さな業務から少しずつ変えていくとよいでしょう。
システムやツールを利用する場合も、事前にマニュアルを整備して従業員に周知しておきます。導入時のトラブルを防ぐためや、決まった従業員だけが動かせるという状況を防ぐためにも事前準備が大切です。
中小企業は組織や業務の全体像が把握しやすいため、ポイントを押さえて業務効率化に取り組みましょう。
業務効率化の成功事例
実際に業務効率化を推進し、成功している中小企業の事例を見ていきましょう。業務効率化の体制を整備したいと考えている企業は、ぜひ参考にしてください。
兵庫ベンダ工業株式会社の事例
兵庫ベンダ工業株式会社は事務職に女性が多いため、介護や子育て中の従業員が働きやすい職場環境を整備する取り組みが進められています。
テレワークを導入した当初は、出社している従業員とテレワーカーの業務負担の違いがあり、現場との温度差がありました。この温度差を解消するためにお互いの作業状況を把握できるシステムが必要と考え、予定表共有やチャット機能、社内のネット掲示板などを導入し、スケジュール管理や情報共有を円滑化させ、従業員がコミュニケーションをとりやすい環境を整備しています。
また、新型コロナウイルス拡大の状況下においても、テレワークとフレックスタイム制が浸透していたため、テレワークと時差交代制出勤を組み合わせた勤務体系にすばやく切り替えることができ、効率的に業務を進められました。
株式会社白崎コーポレーションの事例
株式会社白崎コーポレーションでは、ナレッジ共有のためにSFAを導入し、情報集積や共有の効率化が図られました。
株式会社白崎コーポレーションは防草シートなどの製品を中心に雑草問題解決に取り組んでいますが、雑草を効果的に抑える製品を開発するために膨大なデータの収集と分析が必要です。そこで、個々が管理している週報をSFAを利用してナレッジ共有することで、製品開発に向けてのノウハウをまとめて蓄積することを可能にしました。
出典:株式会社白崎コーポレーション様 | 導入事例 | ジャストシステム
松本興産株式会社
金属加工メーカーである松本興産株式会社では、RPAツールのロボパットを導入し、総務人事部や経理部の集計作業の効率化を図っています。勤怠データの入力から残業代の集計をロボパットがおこなうことで、2名で計2時間かけていた作業が15分で完了するようになりました。
新型コロナウイルス感染症流行後は、在宅勤務でもロボパットを活用できるよう遠隔操作を可能にし、業務の効率化が進められています。
出典:松本興産株式会社 – RPA – Robo-Pat(ロボパット)
業務効率化でよくある失敗
従業員の負担軽減や利益拡大のために欠かせない業務効率化ですが、計画をしっかり立てずに進めてしまうとかえって負担が増加してしまうこともあります。ここでは、業務効率化のよくある失敗例を紹介します。
効果的な業務効率化を図るためにもぜひ参考にしてください。
目的を見失う
ツール導入が目的になってしまい、何のために導入したのかが不明瞭であると業務改善は上手く進みません。
たとえば、デジタル技術を活用したツールを導入しても、従業員が使いこなせなければ業務効率化は難しいでしょう。「従業員の単純作業の負担を軽減させる」という目的を立てておけば、ツールを上手く利用できるよう事前に研修を実施したり、マニュアルを整備したりと、どのような準備をしておけばよいかが自然と明確化します。
導入自体が目的となり、それを活用して業務効率を改善することを忘れてしまわないように注意しましょう。
スピードばかり重視してしまう
無理に業務のスピードを上げようとすると、顧客へ提供するサービスの品質低下につながるおそれがあります。スピード感ばかりを求めて過度な労働を強いれば、従業員にも大きな負担をかけてしまうことになるでしょう。
業務効率化の目的はスピードを早めることではなく、従業員の業務負担を軽減し、コア業務に集中できる環境をつくることで、より良いサービスを提供することです。
スピードを重視した結果、質が低下してしまうのは本末転倒といえるでしょう。効率化=スピードという意識にとらわれず、企業全体の環境改善を意識することが大切です。
現場の意見を聞かずに進めてしまう
実際に業務効率化のためのシステムやツールを使うのは現場の従業員であるため、現場の意見を大切にしましょう。
ヒアリングを十分におこなわないまま導入を進めてしまえば、実際の業務の内容に合っていないツールを導入してしまった、コストカットを優先した業務改善により必要なコストまでカットしてしまったなど、従業員や企業にとってマイナスな働きになる恐れもあります。
まずは、現場の従業員がどのような作業をしているか、困りごとは何か、必要なものは何かなどを十分にヒアリングし、効率化すべき業務を明確にしましょう。
業務効率化ツールと効果アップのポイント
ここでは、汎用性の高い業務効率化ツールを3つ紹介していきます。営業や総務、人事、経理はどの企業にも存在します。企業全体の業務効率化を進めていくためには、幅広い部署で活用できるツールが必要です。
また、ツールの効果を最大限引き出すための向き合い方や考え方、使い方にも触れていきます。ツール導入を検討している企業はぜひ参考にしてください。
グループウェア
グループウェアは、企業内のコミュニケーションを円滑にし、業務効率化を図るためのソフトウェアです。マイクロソフトのMicrosoft 365や、GoogleのWorkspace、サイボウズのGaroonなどがあります。主に、従業員のスケジュール管理やファイルの共有、設備の予約、連絡先共有、メール、掲示板などが利用でき、社内での情報共有を手助けする役割があります。
また、働き方の多様化が注目されテレワークが増えていく現代においても、PCで社内の動きを把握してコミュニケーションが取れるグループウェアは活用が拡大していくでしょう。
グループウェアを導入する際も、目的を明確にして必要な機能が搭載されているソフトウェアを選ぶことが大切です。また、テレワークでの利用も考え、誰でも簡単に利用できる操作性に優れたツールを選ぶとよいでしょう。
SFA(営業支援ツール)
SFAは、営業を可視化して生産性の向上や改善をおこなうツールです。ネクストSFAやSales Cloud、JUST.SFAなどがあります。SFAでは顧客管理や案件管理、行動管理、予実管理、商談管理などが可能です。個々の営業情報が社内でひとつに集約されることにより、営業部でナレッジを共有したり、不在の担当者の代わりに顧客対応したりなど臨機応変な対応ができるようになるでしょう。
営業活動を仕組化できるため、営業活動とその結果を管理しやすくなるだけではなく、属人性の高い営業のノウハウを共有することも可能です。営業全体の底上げにもつながるでしょう。
最近では、ノーコードで構築できるツールや外部システムとの連携ができるツールも増えてきているため、より活用の幅が広がってきているといえます。
RPA(ロボティックプロセスオートメーション)
RPAとは、PC上で対応する業務を、ソフトウェアロボットを利用して自動化するツールのことです。データ入力や転記、ファイルのコピーなど単純作業の自動化を得意とします。
データの入力や転記は単純な作業ではありますが、データが多ければ作業にかかる時間も長くなってしまうでしょう。RPAは企業の中でも総務部や人事部、経理部などで毎月の定例タスクを自動化し、空いた時間をコア業務に注力できる環境づくりに役立つツールです。
RPAはツールごとに得意領域や使いやすさに差があります。導入前に、何をどこまで自動化させたいか、誰が利用し誰が管理するかを明確にし、目的に合ったRPAを選ぶようにしましょう。
まとめ
本記事では、中小企業が業務効率化を進めるべき理由やメリット、実際の成功事例や失敗しやすいポイント、業務効率化に役立つツールなどを紹介しました。
業務効率化を進めるためには、ただシステムやツールを導入すればよいというわけではありません。システムやツールを導入して、何を改善したいのか、最終的にどのような環境を作りたいのかといった目的を必ず明確にしましょう。導入自体が目的にならないよう注意が必要です。
近年では、さまざまな業務効率化のツールが提供されていますが、その中でもおすすめなのがRPAロボパットです。ロボパットは「DX人材育成ツール」としても注目されており、DX推進の第一歩として、導入しやすく使いこなしやすいツールです。
RPAの導入では、社内の人員でロボットを作れるようになることも重要です。メーカーサポートが充実しているかも重要です。RPAを始めとしたITツールを比較検討する際には、サポート体制についても注目するとよいでしょう。