デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、「進化するIT社会にデジタル技術を浸透させることで、人々のくらしをより豊かなものへと変換していくこと」を意味します。日本では、2018年に経済産業省により研究会が発足され、その名が広く知れるようになりました。
多くの企業が取り組みを始めている
例えばAmazon.comのように、インターネット上でプラットフォームの構築を実現し、選んだ商品をどこからでもいつでも注文できるようにした新たな買い物スタイルの台頭により、店舗販売を中心としてきた小売業界は大打撃を受けました。DXの浸透なしには、日本全体の経済が立ち行かなくなるという段階に入ったのです。
株式会社デジタル通信の2019年の調査によると、日本の企業の7割がデジタルトランスフォーメーションに着手していることが分かっています。
DXの意識が高まった背景には、前述した経済産業省による研究会の発足があります。研究会は、「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~(以下、DXレポート)」なる報告書を作成しました。報告書では、企業の多くが既存のシステムの老朽化や、引継ぎがなされずプログラムが複雑化したブラックボックス化といった問題を抱えていると指摘しています。
このような問題は、刻々と変わるデジタル化の波や新たな事業への対応力の欠如、コストの上昇を招き、2025年以降は毎年最大で12兆円の損失を日本経済に与えると予想されています。この問題を「2025年の崖」と呼び、「DXレポート」では問題提起ばかりでなく、DX化へのアプローチの仕方や行動指針をまとめた構成案をも示しています。このような働きかけが、日本企業の7割のデジタルトランスフォーメーションへの着手を促したのです。
DXで失敗しないために重要なポイント
ただやみくもに他社のDX導入のプロセスを真似るだけではDXは成功しません。まず、自社に合うDX推進の道筋を見極める必要があります。
失敗しないDX推進の方法について、4つのポイントをまとめました。
意識改革
1つ目は、現場責任者の意識改革の必要性です。DXを促進していこうとしても、既存の働き方や価値観が上層部の中に根強く残っていれば、その抑止力でなかなか新しい試みが動き出さないという問題が生じます。まずは上司や現場責任者の意識から変わっていかなければ、DX化は推進できないのです。そのため、上に立つ立場の責任者がDXを通して何ができるかを理解し、具体的に示して全体を巻き込んでいくことが必要です。
例を挙げると、社内の様々な業務やシステムの仕組みを熟知したミドル層の社員にDX教育を施し、同時にDXの専門知識を有する人材を現場責任者の近くに置くことで、社内全体のDX化を進めます。
また、自社のシステム開発を外注から内製化にシフトし、外注に伴うコストの削減・開発スピードの改善を実現するのも1つの手です。そうすることで、経営陣や現場責任者へ将来的な人材育成や初期投資の重要性を訴え、DX化推進へのアプローチを試みることができます。
既存システムの把握
2つ目は、既存システムの分析です。個人情報保護の観点から既存のシステムを刷新することが困難な場合や、デジタル技術の導入やシステムアップデートが各部署で別々に行われているために、全容を把握する仕組みが欠如している場合などがあります。
こうした問題には、まず「DX化で実現したい事柄」を精査します。そのうえで、開発担当者や運用担当者らと共にその要望に応えるには何が必要なのか、既存システムに欠けているものは何か、しっかりと分析しましょう。
企業内の連携
3つ目は、システム面を扱う現場と会社全体の戦略を練る経営陣との間に連携がないと、DX化はうまく機能しないということです。既存システムは各部署や各部門でデータ管理が行われていることが多いので、DX化に際しては現場のIT担当者や社員から不安や疑問が多く吹き上がることが予想されます。
経営陣の描く理想が必ずしも現場で歓迎されるものではないかもしれませんし、逆に現場が持っているDX化の必要性を経営陣が過少評価しているかもしれません。経営陣と現場の意識のギャップをなるべく少なくして混乱を避けるためには、各部署・各部門間の横の連携を大切にするばかりではなく、経営陣と現場との縦の情報の共有、連携が重要なのです。
正確な現状把握
最後は、DX化に取り組むにあたり正確な現状の把握に努めることです。客観的に把握するには、経済産業省のWebサイトから各項目を6段階で評価する「DX推進指標」を利用するのもおすすめです。
また、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)では自己の診断結果を入力して、全体のデータとの比較を可能にするベンチマークなどの分析結果を得ることができます。
正確な現状把握が行えたら、DX化に着手するにはどうすればいいのかアクションプランを作成しましょう。そして、ここでのポイントは始めから大きな改革に踏み込むのではなく、部分的な最適化、業務効率化を行うことです。スモールスタートで着実に課題をクリアしていくことで、最終的には企業全体にDXを浸透させることができます。
DX実現に向けたステップ
DX実現のためには3つのステップがあります。
1つ目のステップはIT利用による業務プロセスの強化です。
人の手によって業務の効率化を図り、品質を高めたり、維持したりしていくためには、マニュアルを作ることが重要とされてきました。マニュアルを現場の従業員に遵守させることで、業務プロセスの標準化が行われてきたのです。しかし、人間による業務の遂行である以上は完全な成果はあり得ず、必ずミスが生まれます。
その問題を解決してくれるのが、標準化された業務プロセスをコンピューター上の「情報システム」に置き換える取り組みです。具体的には、紙の伝票の顧客への受け渡しや従業員間の伝言などを、情報システムに置き換えるものです。この段階では、コンピューターの登場以前の業務プロセスをそのままコンピューター上に移し替えるにとどまります。
2つ目の段階は、クラウドやスマートフォンなどの先進技術を使ってもともとのコンピュータシステムを改善し、業務の置き換えをする段階です。
第1段階の業務プロセスを一部踏まえつつも、人為的な業務をIT技術にそのまま代替させて自動化します。ITによる自動化によって、人の労働時間や安全管理、人的ミスなどの制約を減らすことができます。この自動化を可能にするIT技術の1つがRPA(Robotic Process Automation)です。
3つ目は、業務のIT化からITが業務を担う状態へのシームレスな変換です。
現代はWebサイトやスマートフォン、機械に組み込まれているセンサーなどにより、さまざまな事柄をデジタルデータとして捉えることのできる時代になりました。言うなれば、現実世界のデジタルコピーがリアルタイムで生み出され、ネットに送り出されるという社会基盤が作られつつあります。このような仕組みをIoT(Internet of Things)またはIoE(Internet of Everything)といいます。
集積された膨大なデータをビッグデータと呼び、これを人の手で解釈し尽くすことはできません。そこでAI技術の1つである「機械学習」を駆使して解釈し、どうすれば無駄なく効率よく質の高いビジネスに活かせるかを探ります。このように常に最新のデータに対して最良の解読をすることで、業務プロセスをリアルタイムでアップデートするPDCAサイクルを繰り返すことができます。
ビジネスの目標を達成するには、ITと業務が混然一体となることが重要です。この第3段階では、業務だけではなく、組織、人事評価基準、また企業文化そのものを根本から見直したIT化に伴う変革を行います。このステージに到達することで、デジタルトランスフォーメーションを達成できたことになります。
業務の自動化に便利な「RPA」
RPA(Robotic Process Automation)は、民間企業や自治体の業務の効率化、生産性の向上のためのテクノロジーとして注目を集めるようになりました。ここでは、RPAについての概要をご紹介します。
RPAとは?
RPAとは、ホワイトカラーの従業員がパソコンなどで行っている一連の事務作業を自動化するソフトウェアロボットのことをいいます。
人間は限られた時間しか働くことができませんが、RPAは24時間365日働くことができます。従業員の労働時間外・会社の営業時間外でも稼働し続けるRPAは、夜間や早朝でも自動的に業務をさばき続けることができるため、従業員の大幅な負担軽減、処理スピードのアップが見込めます。
また、人間がインプットする指示が間違っていなければ、RPAがミスを犯すことはないため、業務品質の向上につながります。さらに、ミスが激減することによりダブルチェックの必要がなくなり、顧客からのクレームが減って顧客満足度の向上にもつながるのです。
そして、RPAの特徴として、多くのツールは専門的なプログラミングを必要としないため、システムに慣れていない従業員でも簡単に自動化に関わることができるメリットがあります。
DXにおけるRPAの活用例
ここではRPAの活用事例について、3つのステップのうち第1段階と第2段階の事例をご紹介します。
第1段階でのRPA活用事例
ある企業では、教室への入会申込書や月謝の引き落とし用紙の事務処理を手作業で行っていました。これらを一つひとつ人の手で処理していたため、ミスがあったり、他の業務に手が回せなかったり、時間が足りないといった課題がありました。そこで、業務の自動化を図るべくRPAの導入を検討します。
乱雑に書かれた氏名や住所などの人の文字を高い精度で読み取れるRPAを採用したことで、今まで8時間かかっていた作業が1~2時間に短縮されたそうです。さらに、RPAのチェックボックスの読み取り機能を活用し、大幅な業務の効率化を実現。その結果、外部業務などの他の業務に割く時間を創出することができたといいます。
また、第1段階のその他の事例としては、メールに添付して送られてくる商品情報を基幹システムにコピー&ペーストして移す作業を、RPAに行わせた事例があります。さらに、今までFAXによる発注書の中身を手入力で「電子データ交換システム」に移していた行程を、RPAで自動化して業務の効率化に成功したという事例もあります。
このような定型で反復性のある業務をRPAに行わせることは、従業員がコア業務に集中するベースを構築し、生産性の向上に寄与しています。
第2段階でのRPA活用事例
第2段階の例としては、顧客情報の変更などの複雑な業務にRPAの自動化を導入することで、担当者の負担を軽減した事例があります。
問い合わせ内容の入力に1件あたり20分の時間を必要としていたところ、情報入力を自動化することで1分に短縮することができた事例や、同じ業務を行う担当者により処理時間がまちまちだった作業内容をロボットに任せることで、その差異を解消した事例もあります。
その他にも、計算などの事務処理を行うアプリケーションの操作をRPAによって自動化することで、複雑な計算工程を自動化し、ミスの軽減や人手不足の解消を実現します。
まとめ
この記事では、DX化を目指す企業への提案として、DX化に失敗しないための重要なポイント、DX実現への3ステップなどを紹介してきました。
DX化のためにはRPAの活用をおすすめします。企業の中にはRPA導入を実施しても、一部の業務にだけ導入してその後使わなくなったケースや、導入効果が実感できないといったケースがあります。これらの問題は導入による成功イメージが具体化できていなかったり、その活用を組織全体に浸透させるノウハウがなかったりすることに起因します。
RPAの導入を成功させるノウハウを知りたい方は、以下のURLより資料をダウンロードすることをおすすめします。この資料では、RPA導入後に踏むべき3ステップを分かりやすく解説しています。
http://fce-pat.co.jp/download/point04.php
RPAを組織全体で効果的に活用していくことで、生産性の向上を実現してきましょう。