RPAとは?
RPAとは、Robotic Process Automationの略で、直訳すればロボットによる業務の自動化を意味するものですが、一般的には「仮想労働者」と呼ばれています。業務の自動化というとこれまでは産業用ロボットの導入によるブルーカラー業務が一般的でした。
しかし、RPAはパソコンを使ったデータ入力、交通費、給与計算、請求書や見積書の発行といった業務を簡単な設定で自動化します。これにより、ホワイトカラーの定型業務にかかる手間が大幅に軽減され、業務効率化が実現するようになっています。
RPAが得意とするのは、パソコンを活用した業務のなかでもイレギュラーが発生しにくい定型業務です。具体的には次のようなものを自動化します。
・毎月決まった取引先に対し請求書を作成する
・問い合わせにかかってきた電話番号を顧客管理システムから検索し、顧客情報をオペレーターに提示する
・定型的なメールでの問い合わせに対し、事前に作成してある内容を返信する
・WEB上から自社の商品、サービスに関する口コミ、投稿を収集し、その内容からポジティブ、ネガティブ別に分けたり、地域別に分けたりし、分析を行う。また、同時に競合他社と口コミ、投稿を収集し、自社のものと比較する。
・社員の出張時、経理担当者に提出された交通費の請求書から、最適経路の運賃をチェックし、承認、否認の判断をする。
・社員の勤怠管理システムから長時間労働者をリストアップし、データ化する。
ほんの一部ですが、こうした定型業務の自動化がRPAの得意とするものです。
逆にRPAは自らが考え判断するような業務は得意としていません。あくまで人が作業手順を設定したものに忠実に作動するため、例えば交通費精算で手書きの駅名が間違えていた場合などは、うまく対応できません。
RPAで仕事の精度が上がる!
RPAは、業務効率化を果たすシステムとして、さまざまな場面で効果を発揮しますが、ここではそのなかでも主なメリットについてお伝えします。
・システムやツールの連携
これまでにも業務効率化を実現するシステムやツールにはさまざまなものがありました。前項で挙げた産業用ロボットのほかにも、主なものとして、財務処理を効率化する財務管理システム、営業社員の業務を効率化する営業管理システム、コールセンター業務を効率化する顧客管理システムなどがあります。
また、在宅勤務や外出中の社員とリアルタイムでコミュニケーションが図れるグループウェアやメーラーなども、効率化、生産性向上に寄与する重要なツールです。
しかし、これらのシステム、ツールの課題の一つとして、ツール側に連携機能が用意されていなければ、それぞれの連携が取れない点が挙げられます。
一方、RPAはそのほとんどのシステム、ツールをまたいだ作業の実施が可能です。
これにより、例えば次のような業務が実現します。
・顧客から集めたアンケートをExcel上で集計、グラフ化し、その結果をグループウェアに投稿する
・独自運営のネットショップで顧客管理システムからサンクスメールや新商品先行販売メール、イベント招待メールなど購入回数別に自動でセグメントし、メール内容を振り分け自動で送信する
・単純ミスの軽減
ホワイトカラーのパソコンによる定型作業といえば、顧客管理システムへ取引先の名刺登録、競合商品の価格調査といった手間がかかるもの。また、給与計算、請求書や見積書の作成などミスが許されないものなどが中心です。
これらの業務は、単純ではあるものの人の手で進めるとどうしてもミスが起こりがちです。しかし、RPAを活用すれば基本的にミスがなくなります。
・データ収集量のアップ
データ収集は人が行う場合、時間的な制約もありその量には限界があります。また、見落としといったミスも起こりやすくなるでしょう。しかし、RPAであればそうした心配は不要です。
例えば、競合する企業の商品データをWeb上から収集するといった作業の場合、人の手で行うと時間もかかるうえ探し漏れもありますが、RPAは適切な設定さえしておけば、短時間で人の手だけでは収集が難しい大量データの入手も可能です。また、時間設定をしておけば、毎日でもデータ収集を行い、常に最新の状態を保てます。
・社員の心理的負担軽減
単純ではあるものの、手間がかかったり、ミスが許されなかったりする作業は、社員の心理的負担も大きくなります。仮にそれらの作業が上手くいったとしても、多くの時間を費やしてしまい他の業務に十分に取り組むことができないなど、問題となる可能性もあります。また、ほかの作業が忙しく、作業の実施自体を忘れてしまうといったリスクもあるでしょう。
しかし、RPAを活用し、これらの作業を自動化できれば、社員が手をかける必要がなくなるため、心理的負担が取り除かれ、ほかの業務への影響も心配ありません。当然、作業の実施を忘れてしまうといったミスもなくなります。
・クリエイティブ業務の時間拡大
これまで、定型作業に費やしていた時間がRPAによって自動化されれば、よりクリエイティブな業務に時間を割けるようになります。具体的には、商品の企画開発や商品、サービスの質の向上、取引先との連携強化などに集中して取り組めるようになるでしょう。
・社員のワークライフバランスの向上
定型作業に費やす時間が削減されれば、上述したようにクリエイティブ業務に時間を割くこともできますが、残業の必要がなくなり労働時間が短縮できたり、休暇も取得しやすくなったりと、働き方が改善できる可能性もあります。
これにより、社員のワークライフバランスが向上。結果として、社員の離職防止、優秀な人材の採用、育成・研修コストの削減といった効果も期待できます。
RPAによる仕事の精度を上げるには?
さまざまなメリットにより、仕事の精度向上に大きく貢献するRPA。
とはいえ、そのルール設計自体は人間の手で行う必要があるため、RPAが行う仕事の精度は、設定したルールの精度に左右されます。
では、実際にRPAによる仕事の精度を向上させるにはどうすればよいのでしょう。ここでは、2つのポイントをお伝えします。
ルールに基づく作業の場合
まずは、RPAの機能でもっともポピュラーな「ルールに基づいて業務を自動化する機能」について、精度を高めるためのポイントをお伝えします。
RPAはパソコンを使ったさまざまな業務を自動化しますが、RPAを導入すればすぐにすべての業務を自動化できるわけではありません。RPAに業務を任せるためには、人間が作業手順を登録する必要があります。
ここでの最大のポイントは、作業手順を正確に登録することです。RPAは人が登録したとおりに作業を進めるため、正しく登録すれば正しく作動し、間違えて登録すれば間違って作動します。
また、もう一つの重要なポイントは、自社の状況に応じたRPAの選択です。ひと口にRPAといってもその種類は数多く存在します。基本的にどのRPAであっても作業手順の登録はプログラミングの知識を必要としませんが、それでも種類によってはある程度のITリテラシーやRPAのルール設定の知識、経験が求められます。
そのため自社にITやRPAの知識や経験を有している社員が少ないと、作業手順の登録で手間取り、効率化も進みません。そうしたリスクを避けるにはRPA選定時に、作業手順は直感的な操作で登録できるもの、もしくはサポート体制がしっかりとしているメーカーのものにすることをおすすめします。
また、RPAによる業務効率化の効果を高めるために、自社で利用しているシステムやツールと連携が可能なRPAを選択しましょう。
多くのRPAは、他社メーカーの営業・販売・顧客管理システムやグループウェア、メール、各種SNSなどと連携させられるようになっています。
これらとの連携体制を構築できれば、精度の向上やさらなる効率化に繋がります。
OCRツールと連携する作業の場合
RPAの活用方法として近年注目を集めているのが、OCR(光学文字認識)ツールとの連携です。
OCRツールでは、紙の請求書や資料などに書かれた文字を認識し、デジタルなテキストデータへと変換することができます。
このOCRツールとRPAを連携させると、具体的には次のようなことが可能になります。
・取引先から送られてきた手書きの請求書を認識し、パソコンに取り込み経理管理システムに登録する。
・Excelの登録したデータからグラフボタンを押してグラフを作成し、完成したらグループウェアを開き、社内のグループに投稿する。
・展示会やイベントで収集した名刺をテキストデータ化し、顧客管理システムに登録した後、お礼メールの送信、次回イベント案内のDMで宛名印刷を行う。
従来であれば、手書きの請求書や名刺は一つひとつパソコンで打ち込む必要がありました。また、OCRを使ってテキスト化できたとしてもその後の作業は人の手を使わなくてはならないため、手間がかかるうえ、ミスが起こるリスクもあります。
一方、OCRとRPAを連携させれば、それらすべての作業が自動化され、効率化とともに高い精度を実現します。
OCRを使う作業では読み取り精度がカギ
RPAとOCRの連携を伴う作業を行う際は、OCRの精度がポイントとなります。
RPAにて作業手順を間違いなく登録したとしても、OCRの読み取り精度が低ければ、数字や取引先の相手の名前を間違って登録してしまいます。そうなれば、企業にとっては致命的なミスにつながるリスクが増大するため、OCRの精度には十分に注意しなくてはなりません。
精度100%は不可能、人の目でカバーを
OCRで高い精度を実現するには、手書きの文字を高精度に認識するAI技術を搭載したAI OCRがおすすめです。とはいえ、たとえ高機能なソフトを使ったとしも、100%の精度を出すことは現実的には不可能です。
重要なのは、ツールだけで作業を完遂することにこだわらず、最終的には人の目を入れるなどのチェック体制によって精度をカバーすることです。
完全な自動化を目指すのではなく、RPAやOCRによって多くの手間を省いて、人間をアシストするイメージで業務を設計するとよいでしょう。
RPAの活用にはノウハウ習得が必要
RPAは活用次第で、さまざまな業務を精度を高めながら効率化することが可能です。しかし、そのためにはRPAの機能を理解し、最大限の効果を発揮させるための活用方法を知らなくてはなりません。
そこで、そのノウハウを習得する方法を紹介します。
・書籍や勉強会への参加
RPA関連の書籍を読む、勉強会へ参加するといった形でノウハウを習得します。書籍だけでは細かいノウハウがつかみにくいため、その補助として勉強会や講習でディスカッションや質問をしながら理解を深めていきます。
・簡単な自動化をいくつも試す
ノウハウの習得でもっとも高い効果が得られるのは、やはり実践でPDCAを回すことです。まずは、Web上のデータ収集や毎月定型の請求書発行といった簡単な自動化で試し、その経験を基に複雑な業務の自動化を進めていくとよいでしょう。
・販売メーカーのセミナー参加
自身で色々と試しつつも、その速度を速めるには自社が使っている、もしくは導入の検討をしているメーカー主催のセミナーへの参加がおすすめです。日々の疑問の解決、同様の課題を抱えている企業の事例を知る、活用のポイント紹介など、これから活用していくうえで役に立つ多くの情報を得られます。
ロボパットDXでもセミナーを行っていますので、活用方法について疑問がある方や導入の検討をされている方はぜひご参加ください。
また、ロボパットDXでは、オプションとして、記事内でもご紹介したOCR(文字認識)ツールである「Pat-OCR」を利用することができます。
Pat-OCRの読み取り精度は96.7%と高く、ほとんどの文字をデジタルデータ化することができます。人の手によるチェックや修正の手間を最小限に抑えることができるでしょう。
気になる方は、こちらの情報もチェックしてみてください。
RPAの機能を深く理解することが精度向上のポイント
RPAを使い仕事の精度を上げるためには、RPAの特徴をしっかりと理解し、そのうえで自社の課題点にどう対応させれば効果を発揮するのかを把握することです。
理解を深める際には、各RPAメーカーのセミナーは大きく役立ちます。ぜひセミナーに参加し、自社の業務精度をより高めていきましょう。