業務改善に効果的な「RPA」とは?
「RPA(Robotic Process Automation)」は、働き方改革や生産性向上を支えるツールとして大きな注目を集めているデジタルテクノロジーです。
RPAが注目されるようになった背景には、その導入効果の高さがあります。これまで人がパソコンを利用して手作業で処理していた事務的な作業を、RPAが自動処理することにより、作業時間の大幅な短縮につながりました。
このようにオフィスの事務作業の概念を変える高い業務効率の向上効果を持っていることから、RPAを導入する企業が日本でも急増しています。
事務作業はさまざまな形態のものがありますが、現在のRPAが対象にしているのは主にパソコンを使った定型化されたルーチンワークです。例えば集計したデータをほかのフォーマットに入力したり、ECサイトの売り上げを毎週Excelに入力したりする業務との相性が良いとされています。
RPAが業務改善に役立つ理由
業務改善のためのツールとして、RPAに似たBPRとBPOがあります。
「Business Process Re-engineering」の略であるBPRは「業務改善」ではなく「業務改革」と訳されます。業務の本来の目的に向かって、既存の組織や制度を見直し、プロセスの観点から職務や業務フロー、組織構造、情報システムをリエンジニアリングするというものです。
BPRは「業務改善」ではなく「業務改革」するものですので、業務プロセスを抜本的に見直し、研究開発や製造、品質管理、人事評価というようなすべての企業活動を再統合し最適化することを目指しています。
「Business Process Outsourcing」の略であるBPOは、業務改善のために業務プロセスの一部を外部委託することを意味しています。主に、人事や経理、総務などのバックオフィス業務を外部の専門業者に委託することで、業務効率化やコスト削減のほか、コア業務へ集中したり創造的な業務へ時間や労力を振り分けたりできるようになります。
RPAはBPOと異なり、定型的な業務を自社内で自動化することで業務効率化を目指すものとなっています。
「業務改革」とは業務そのものを根本から見直し改めることで、「業務改善」とは業務のムダを削減し、無理をせずに業務を効率的に進められる取り組みをおこなうことを意味しています。
現在の業務プロセスを否定して根本的に改革をおこなうのであればBPRが最適ですが、現在の業務プロセスを活かしながら外部業者に委託せず、自社で業務改善をおこなうのであればRPAが最適だといえるでしょう。
業務改善目的でRPAを使うための事前準備
業務改善目的でRPAを導入する前に準備しておきたいことがあります。準備をせず、やみくもにRPAを導入したとしても、業務改善を実現できずにRPAの導入は失敗するでしょう。以下の内容をよく理解してからRPAを導入するようにしましょう。
業務改善で求める成果を明確にする
RPAで業務改善を目指す場合、業務改善により求める成果について明確にしておきましょう。
従来の業務改善では、人事や経理・財務、営業業務、調達などの人手が必要になるルーチン業務は検討対象から外れていました。
しかし、RPAであればこれらの領域の業務改善でも定型作業の自動化によって可能となります。そこで求める成果について、「生産性向上」なのか、「従業員の心理的負担からの開放」なのか、「浮いたリソースを創造的な業務に振り分ける」なのかを明確にしておくことが大切です。
業務そのものを見直す
RPAで業務改善をするにあたり、業務を棚卸しすることで業務そのものを見直してみましょう。具体的に以下のような仕分けが可能です。
人手による作業が多く、RPAでデジタル化することにより効果が大きい業務
このような業務は、Excelなど従来の業務ソフトでも自動化できるものがあるのでよく確認しておきましょう。
異なるシステムやアプリケーションからデータや情報を集め、編集や集計などをおこなう業務
RPAが最も威力を発揮する業務です。自動化することによって大きな効果を得られます。
同様の処理を多くの人もおこなうことで、処理ルールが徹底されず後工程での確認や修正に手間がかる業務
処理の自動化によるリソースの節約という効果よりも、業務品質の向上というような効果を狙うと良いでしょう。
処理条件が複雑なものや頻繁に変更する業務
処理条件が複雑だったり頻繁に変更したりする場合、人の手による作業では混乱することがあります。このような業務は、RPAで自動化することによりミスがゼロとなり品質と生産性は飛躍的に高まります。
業務処理の際の品質管理が厳しく求められている業務
入力業務や編集処理をおこなった後、処理が正しくできているかを検証する工程は、人の手でおこなうと見落としが発生する可能性があります。そこでRPAを活用することで、目視によるチェックの見落としや見間違いをなくすことができます。
異なるシステム間やデータ間の追加・削除やバージョンの整合性などを保証したい業務
正確性を持つRPAであれば、システム間やデータ間の不整合によるトラブルの防止に役立ちます。
どの作業がどのくらいの分量あって、どんな順序でおこなわれているのか。部門をまたいでおこなわれている作業はどれか。
このような内容が社内で暗黙知となっているのであれば、棚卸しをして明確にしておきましょう。
業務の流れを正確に把握する
RPAを導入し業務改善をおこなうため、業務の流れを正確に把握しておく必要があります。
1.準備
RPAで改善する業務を選定し、目的の明確化や現状把握、目標設定、開始と終了の決定をおこないます。
2.業務の棚卸しと流れの設計
対象業務に関する作業を洗い出して、RPAを組み込んだ流れを設計していきます。
3.フローチャートの作成
業務の流れを記したフローチャートを作成し、「開始~終了」の流れを記します。
4.判断基準や異常処置の設計
明確な判断基準を作成して、異常処置まで洗い出していきます。
5.RPAの作業と人の作業を明確化
人とRPAのロボットの作業を明確に分けます。
6.効果の確認と改善
RPA導入の効果を確認して、それに基づきながら業務改善をおこないます。
7.書類の整備
新しく作成した仕事方法に沿って、書類を作成したり改訂したりしていきます。
RPAを導入し業務改善を成功させるには?
RPAを導入して業務改善を成功させるために以下のことに留意しておく必要があります。
RPAの管理・運営体制を構築する
RPAは管理をきちんとおこなっていないと管理者不在の「野良ロボット」が発生し、システムに負荷をかけたり業務の工数が余計にかかったりするなど、業務改善とは正反対のことが起きる可能性があります。
そこでRPAを導入するのと同時にしっかりとした運用ルールを制定しておく必要があります。また、RPAの運用管理チームを設置して、ロボットの品質管理を徹底するのも良いでしょう。
なお、制定しておきたい運用ルールは、以下のとおりです。
ロボット作成時の申請方法
システム部門など、RPAを管理している部門にロボットに自動化させたい業務内容を伝え、ロボット作成を申請するための連絡フォーマットを記載します。
ロボットを作成できる社員の資格
RPAのロボット作成スキルを表した社内資格の制定など記載します。
ロボット作成のためのスキルアップ方法
社内におけるRPAのロボット作成資格を得るための教育コンテンツの受講方法などを社内に周知させましょう。
RPAを運用しているときにトラブルが発生した場合の対応方法
RPAを運用している現場部門だけでは解決できないトラブルが発生したとき、よくあるトラブルの対処法や指示を仰ぐ先の情報などを記載します。
また、既に存在する「IT統制ルール」の中に「RPAのロボット開発ルール」を組み込みましょう。利用するRPAツールの詳細についても「RPAのロボット開発ルール」の中に記載するようにして社内で共有しましょう。
現場社員から見た「開発されたRPAのロボット」の品質レビューもあると業務改善に役立てることができます。
現場主体で運用する
日本企業の多くは社内にエンジニアがいないという特徴を持っています。その点、RPAの導入はツール次第ではエンジニアが不要なため着手しやすいでしょう。
また、エンジニアを必要とせずにRPAを導入できれば、現場主体で運用できるITシステムの構築が可能です。RPAによる業務改善は、「システムアプローチ」ではなく「現場アプローチ」で考えるようにしましょう。
このように運用していった結果、RPAを実際に活用する現場部門にノウハウが蓄積することになります。「RPAに任せる業務」と「人に任せる業務」については、現場部門で適切に判断していけるようにしましょう。
業務改善効果を定量化する
RPAに求める成果目標に対して、どれほど改善できたのか数値化して効果を見える化しておくことが大切です。RPAの導入効果を定量化しておくことで、誰が見ても分かりやすくなり、どの業務にRPAを利用したら良いのかについての効果指標にもなります。
まとめ
本記事では、RPAを導入して業務改善を成功させるにはどうしたら良いのかについてご紹介しました。
市場調査会社のMM総研による動向調査によると、企業におけるRPAの導入率は2018年では22%、2019年では38%と確実に増加傾向にあります。大手企業に絞ってみると、2019年11月時点で50%以上の導入率と高い数値になっています。また、RPAを導入した企業の80%が「今後は利用を拡大することを検討する」と答えています。これらの数字からも分かるとおり、将来的に見てもRPAを導入する企業はますます増えていくと予想されます。
RPAの導入にあたっては本記事で紹介した内容を理解したうえで、導入事例などを参考にしながらRPAツールを比較検討するようにしましょう。
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