税理士法人さくら優和パートナーズ
福岡・熊本・鹿児島の3 カ所に事務所を構える、税理士法人さくら優和パートナーズ。「会計・巡回監査」「税務相談」「決算対策」「業種別会計システムの導入」など、幅広いサービスを提供しています。
全体会議で「RPA実績報告書」を作って共有しています。作ったロボットに関して「自動化する手順」「手動で行っていたときにかかっていた時間」「実際にロボットが動いているようすの動画」などをこまかく記載し、知識がない職員にもイメージが湧くように工夫。結果、全体会議後に職員から「この業務を自動化したい」と相談が来るようになりました。
ロボパットを選んだワケは、もし明日担当者に何かあっても、職員の誰かが引き継げるツールだったからです。ロボパットは「ダブルクリック」などのコマンドを組み合わせるだけなので、専門知識をもたない職員でもロボットを作れます。属人化せずに組織としてRPAを扱えるよう、「現場の人が使える」という視点をもつことは大切だと思います。
職員から「この業務を自動化できないか?」と相談が来たら、業務の手順を把握するためにヒアリングをします。ヒアリングはなるべく一度で済むように、工程が多い業務などは、スマートフォンで業務の一連の流れを録画。あとから動画を見返しながら、ロボット作りを進めることで、業務の流れに対する認識のズレも起こりにくくなります。
※以下、敬称略税理士法人さくら優和パートナーズは、2020年8月にロボパットを導入しました。
税理士法人ならではの手入力がメインの業務など、さまざまな業務を自動化されています。ロボパットによって、日々の業務がどのように効率化されたのでしょうか?
税理士法人さくら優和パートナーズ代表社員税理士 岡野訓さん、マネージメントサービス事業部 マネージャー 中村大樹さん、マネージメントサービス事業部内山和明さん、広報 上江洌恵美子さんにお話を伺いました。
税理士法人ならではの単純作業を自動化!
お客様と関わりのある業務や、社内だけで完結する業務など、社内外どちらの業務もロボパットで自動化しています。
最初に作ったのは、社内で使っているグループウェアに、ファックスで送られてくる案内情報を自動配信するロボットです。
これまでは総務部の担当者が、複合機にPDF形式で溜まっているファックスの内容をパソコンで確認していました。
そして、「セミナー案内」「勉強会のお知らせ」など、社内に共有するべきものは、手動でグループウェアの掲示板にファイルを貼り付け、社内に共有していました。多いときだと一気に10個のデータを貼り付けることもあり、手間がかかってしまうので、総務経理部の担当者から「この業務を自動化したい」と依頼をもらったんです。
手動で行っていたときにかけた時間は、1日5分×営業日。1カ月に換算すると、約100分かけていました。今では、グループウェアで共有するデータを総務経理部の担当者が選び、あとはロボットがすべて自動化してくれています。
申告書印刷・報告書印刷・返却業務を自動化するロボットです。
これまでは、税理士事務所オフィスマネジメントシステムにログインし、関与先企業の申告書を開き、印刷ボタンを一つひとつ押していました。そして、印刷したあとにパソコン上でデータを束ねて、各担当者に手動で返却していく業務をしていたんです。今では、ほとんどの流れをロボットが自動で進めてくれています。
手動で行っていたときにかけていた時間は、1社あたり10〜15分ほど。1年で約2,000社分の業務を行う必要があるため、1社で10分として計算しても、333時間の効率化につながっています。これまでこの業務を遂行していた総務経理部の担当者からは「単純労働の連続だったから、自動化できてありがたい」という声をもらっていますね。
月1回の全体会議で「RPA実績報告書」を作って共有するようにしています。
社内で共有できるWebページに、これまで作ったロボットの詳細を記載し、全体会議で発表しているんです。それぞれのロボットの「自動化する手順」「手動で行っていたときにかかっていた時間」「実際にロボットが動いているようすの動画」「関与先」をこまかく説明し、RPAに対する知識がない職員も、イメージが湧くようにしています。
RPAを導入した当初は、「RPAが何をするものなのかわからない」という職員が多くいました。しかし、全社会議での内山の発表を聞いて、ロボパットの存在が段々と浸透しています。実際に、全社会議が終わったあとに、職員から自動化の依頼が来ているようで、「RPA実績報告書」の効果は大きかったのではないでしょうか。
説明するよりも成果物を作る。スムーズに導入に至ったポイント
税理士法人は、単純作業がとても多い業種です。パソコンに張り付いて、データを入力したりボタンをひたすらクリックしたり、業務の負担が大きいのです。
そうした単純作業を自動化・効率化し、30分でも1時間でも時間を空けることができれば、その分付加価値の高い仕事に転換できます。こうした未来がより発展する可能性があるものに関しては、積極的に取り入れていくべきだと日々職員に伝えていました。
そこで内山が自ら手をあげてくれて、独自にRPAについてリサーチし、ロボパットを導入することになったんです。
岡野が「単純作業を効率化し、その分本質的な業務に時間をかける」と言っていたことは、RPAで実現できるのではないかと考え、まずはRPA業者に片っ端から電話をかけました。大手も含めてさまざまなRPAを比較・検討し、トライアルが可能なツールはトライアルも行いました。
はい。予算を割いて導入するためには、RPAの説明をするよりも、実際の成果物を見せたほうが早いと思ったので、トライアルでロボットを3つ作りました。そして、中村に完成したロボットが動いている様子を見てもらったんです。導入後のイメージを掴んでもらい、スムーズに本導入することが決まりましたね。
実際のロボットを見るまでは、あまりRPAに対してイメージが湧いていなかったので、感動しました。RPAについて「入力作業をロボットがやるもの」としか認識していませんでしたから。しかし、内山が作ったロボットを見てみると、ソフトの立ち上げまで自動化されていて「業務の端から端までロボットが代行してくれる世界があるのか」とびっくりでした。
それまでは、内山に短期間でロボットを作る能力があることも知らなかったので、ロボパットの能力と合わせてダブルで感動しています。
もし明日私の身に何かあっても、職員の誰かが引き継げるツールを探していたからです。RPAを導入して生産性を向上させることは重要ですが、ひとりしか扱えないツールを導入するのは、組織として活用していくのにリスクがありますから。「ある日突然、ほかの職員がロボット作りに任命されても困らない」ところも考えて、ロボパットを選びました。
ロボパットを扱うにあたり、プログラムなどの専門知識は必要ありません。実際、私ももともとITツールを触ったことがありませんでした。大学2年間で情報システムを少しだけかじったくらいで、ロボパットを使うまでは関数も知らなかったんです。それでも、トライアル期間で3つのロボットを完成させることができました。
ロボットを作りやすくするためには「情報をいかにデータ化するか」が重要
現時点で、ロボット作りを担当しているのは私ひとりです。私が所属しているのが監査3課でして、「会計帳簿のチェック」「データ報告書の作成」などの通常業務と並行して、ロボット作りを進めています。
職員から「この業務を自動化できないか?」と相談が来たり、私から「何かロボットでできることはないですか?」とコミュニケーションを取ったりして、自動化する業務を集めていますね。
自分が担当していない業務を自動化するときは、業務をどのような手順で進めているのかを確認するため、担当者にヒアリングを行います。ヒアリングはなるべく一度で済むように、工程が多い業務などは、スマートフォンで業務の一連の流れを録画しているんです。その動画を見返しながら、ロボット作りを進めています。
ロボット作成の依頼が来たということは、重要度の高い業務だと思うので、翌日にはある程度までロボットの形を作れるように心がけています。そして、ヒアリングをした次の日に、担当者へ「このロボットどうですか?」と聞きながら細かい部分を詰めています。
翌日までにロボットを作れるのは、ロボパットだからこそです。「ダブルクリック」「マウスを下にスクロール」などのコマンドを組み合わせるだけなので、先ほどもお伝えしたとおり専門知識が必要なく、ロボットを作る時間が短縮できます。
自動化するには、業務のなかで扱うものがデータ化されていることが必須です。そのため、お客様の情報などをデータでもらうように工夫しています。
たとえば、お客様向けに行う年末調整についてのアンケートをアンケートアプリを使って実施しました。
アンケートアプリであれば、集まったデータを簡単にExcelで一覧化できます。このデータがあれば、ロボパットを使って専用のソフトに転記していくことができるんです。
「ロボットを作りやすくするために、情報をいかにデータ化するか」を念頭において、普段の業務を進めています。
人が手入力しない世界を実現したい。今後のビジョン
弊法人のコンセプトは「労働時間を半分にして、売り上げを2倍にしよう」です。これを達成するためには、今までの延長線上で小手先の効率化を図っても、正直難しい。5%、10%の効率化はできるかもしれませんが、2倍を達成するためにはやり方をガラッと変えるしかないんです。
そこで内山が考えてくれたのが、RPAを使った自動化でした。今はまだ自動化の過渡期ですが、最終的には「ロボパットを使い、人が手入力しない世界を実現したい」と、内山とよく話しています。絵空事ではなく、夢物語ではなく、実現していくつもりです。
これが叶えば、税理士法人の根幹である事務作業が一切なくなるので、お客様に対するコンサルティング業務などに特化でき、お客様の経営により貢献できるようになります。
事務作業をゼロにするために今考えているのは、OCRやAIといったほかのソリューションとRPAを掛け合わせることです。たとえば、RPAを使って会計ソフトに情報を入力したあとに、AIを使って監査まで行う、のようなイメージです。
RPAを軸として、最先端のテクノロジーを取り入れることによって、さらに効率が上がって可能性が広がると思っています。
あとは今後、ロボパットを使える職員を増やし、ロボパットチームを作りたいですね。ほかの人の意見を聞くと「こういう視点があるのか」と新しい気づきがありますから。
これからチームを作ったときに、ほかの職員ができるだけスムーズにロボパットをマスターできるよう、ロボットの作り方に関してひらめいたアイディアをメモした「ショートカット集」を作っています。独自のマニュアル集みたいなもので、チーム化の際はぜひこれを活用していきたいですね。
弊法人から枠を広げた視点でいうと、ロボパットを使って進める業務をパッケージ化して、外部向けにサービスとして提供していきたいです。
お客様からお預かりした書類を、ロボパットが記帳代行し、試算表を出し、成果物をお渡しするというアウトソースサービスを提供しています。現在、医療業界からの依頼を複数お受けしているので、事例を溜めて標準化し、医療業界向けのパッケージにできたらと考えています。そして、パッケージ化が実現したら、今後は医療業界だけではなく、さまざまな業界へと横展開していきたいです。
あとは、自動化を進めることによってノウハウや知識を溜めていき、弊法人で成功モデルを作り、ほかの税理士法人への横展開もできたらと思っています。本当に事務作業が多い業種なので、ロボパットを導入することで効率化を叶える事務所を少しでも増やし、税理士業界全体の発展へとつなげられたらうれしいです。
藤城 欣央 営業推進部・DXチーフコンサルタント
初めてのロボをお披露目頂いた時点で、自社の業務のみならず、クライアントの業務効率化を視野に入れた一気通貫のDX推進をされていることに、「すごい!」と感動しました。内山様の「完成した時をイメージするとワクワクする」と言いながら自動化を進める姿勢に、さくら優和パートナーズ様がDX推進し、発展していく可能性と未来を感じました。今回の事例は、まさにそのDXの第一歩を踏み出した過程の記録です。今後、ますます税理士業界やお客様の現場のDX推進にも影響していく存在として、発展されることを楽しみにしています。